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Yukibou's Hideout on Hatena

自分用備忘録的な何か。

任天堂はWiiで何を失敗したのか。

ゲーム ゲーム業界 雑記

任天堂が苦しんでいる。

今年の1月に発表した決算報告では、4期連続の赤字は脱したものの、通期の営業利益は半減。為替損益の影響で純利益予想は上方修正したが、かつての超優良企業の勢いはまだ戻ってきていない。


任天堂が2015年3月期第3四半期決算を発表、あわせて通期業績予想を修正――売上高、営業利益は当初想定を下回る見込みに - ファミ通.com

 

勘違いしてもらっては困るのだが、任天堂はゲームパブリッシャーとして考えれば、今でも世界トップレベルの会社なのは間違いない。たとえば、あらゆるレビューサイトの平均点を記載している、Metacriticの2014年のゲームパブリッシャーランキングでは任天堂が1位なのだ。


Metacriticゲームパブリッシャーランキング2014が発表!トップは任天堂 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

 

そんな任天堂がこうなってしまった原因は色々あるだろう。個人的には、Wiiがあまりにも売れすぎてしまったことが原因の一つではないかと思っている。

Wii【メーカー生産終了】

Wii【メーカー生産終了】

 

2006年に発売されたWiiは、現在まででなんと1億台以上売れている。同時期のPS3や前年に発売されたXbox360が8000万台程度であることを考えると、いかにWiiが売れたかがわかる。モンスターマシンとさえいわれたPS2が1億5千万台売れているが、おそらくWiiは最後の1億台ハードになるだろうとも言われている。

 

いまさら言うまでもないが、Wiiはゲーム業界に「モーションコントロール」を持ち込んだ革新的なゲーム機だ。このギミックはその後、PS3PS MoveXboxKinectに多大な影響を与えた。Wiiと同時発売だった「WiiSports」は8200万本を売り上げ、あの「スーパーマリオブラザーズ」を抜いて世界一売れたゲームにまで上り詰めた(ただし、海外ではWiiSportsはWiiに同梱されていたため、この本数に達したとも言える)。

 

ただ、今にして振り返ればWiiには大きな問題がいくつかあった。

まずはそのスペックだ。

Wiiのスペックは同時期のXbox360PS3と比べると、ほぼ一世代遅れているといってしまってもいい。なにしろ解像度が480pでのSD画質なのだ。

Wiiが登場した当時、日本のTVはまだまだブラウン管のTVが多かったし、HDMI端子を備えていないTVがたくさんあった。だからこのスペックでも問題無いと判断してWiiをSD画質のゲーム機にしたわけだが、宮本氏も後に語っているように、HDTVの普及時期を2〜3年見誤ってしまったのだ。


任天堂の宮本 茂氏に聞く,「ピクミン3」の魅力――「インタラクティブメディアは,“自分”が関わっていることが一番面白い」 - 4Gamer.net

一部を引用すると

宮本氏:
 HD化はもっと早くしたかったぐらいなんですよ。
 Wiiも,値段がいくらになっても構わないのであれば,最初からHD対応にしても良かったんです。ただ,HDに対応したTVの普及には時間がかかるだろうし,その段階でWiiだけをHD対応にしても意味がないと考えていたんですね。
 僕らとしてはWiiの次の世代ぐらいの時期になれば,HD対応のTVも普及しているだろうから,そこでゲームもHDに対応させようという順序を考えていたんです。でも,HDの時代が想定より2~3年早くやってきてしまったんですね。これは外国製の液晶TVの価格が考えられない速度で下がっていったのが,大きな要因でしょう。
 結果,Wiiを売っている最中に,どんどん家庭のリビングにあるTVがHD対応になっていったんですよ。とくに海外は,これまでハードウェアが急激に新しいものへ置き換わることなんてほとんどなかったんですが,アメリカでもHD対応のTVがどんどん一般的になっていったんです。 

だが、Xbox360PS3は初めからHDに対応していた。これは、TVだけの問題ではなくて、開発環境がPCゲームと共通化しつつあった事にも起因しているし、欧米で起こりつつあったPCゲームの革命にも関係している。

 

欧米では2003年にゲーム配信プラットフォームである「Steam」が始まった。Steamとは、アカウントさえあれば、Steamクライアントを通して、どのPCでも自分が買ったゲームを遊ぶことが出来る、アカウント統合型のプラットフォームだ。

それまで海賊版に悩まされてきたPCゲームにとってSteamは画期的だったし、ユーザーにしてみても、インターネットにつながっているPCにSteamクライアントをインストールしさえすれば、どのPCでも買ったゲームが遊べるという、夢のようなプラットフォームだ。Wiiが発売された2006年には開発元のValveだけでなく、CoDシリーズなども遊べるようになっていた。

Xbox360PS3は、こういったPCゲームのトレンドを取り入れたゲーム機でもある。ゲーム機を買った時に、まずアカウントを作成し、ゲーム機と紐付けする。そうすることで、買ったゲームの所有権を明確にすることが出来るのだ。例えば、PS3の自分のアカウントで買ったゲームアーカイブスのソフトは、PSPでもPS Vitaでも遊ぶことが出来る。これはアカウントに購入情報が紐付けされているためだ。iOSのAppStoreなどの仕組みと同じである。

 

だが、Wiiはこういう選択をしなかった。WiiアバターであるMiiは、あくまでただのアバターであり、アカウントという概念ではなかった。Wiiで買ったバーチャルコンソールなどのゲームは、あくまでWii本体に紐付けされているものであり、たとえば本体を買い替えたりした場合は基本的に諦めるしか無いのだ。まあ、任天堂のゲーム機はそもそもめったに壊れないのだが…

Wiiのメインメニュー画面を見ると、当時のブラウン管TVを模しているのがわかる。つまり、WiiはTVのリプレースを狙ったゲーム機なのだ。だからメニューが「チャンネル」と呼ばれ、ゲームだけでなく天気や占い、果ては出前まで出来るようにサービスを拡張していった。だが、ワールドワイドで共通のサービスを提供しようとするビジョンがどこまであったのかは謎である。


My Homebrew'd Wii Menu Test Video - YouTube

任天堂ニンテンドーDSのタッチパネルで成功を収めてしまったために、その後のハードウェアにも独自のギミックを仕込むことで、新しいゲーム体験を作り出してきた。だがその一方で、Steamのようなプラットフォームが現れ、PCゲームとコンソールの垣根が限りなく無くなっていくことまでは予見できなかったのだろう。

 

確かにゲームはアイデアひとつで面白いものを作れる。それは任天堂がこれまでずっと証明し続けてきた事だ。だが、現在のゲーム業界は、サードパーティにとっては、一つのプラットフォームだけで膨大な制作費を回収できる世界では無くなってしまっていた。となると、PCと開発環境で親和性があり、移植や同時開発が容易なXboxやPSプラットフォームにソフトを提供しようと考えるのも自然な流れだ。登場時点でスペックで劣っていたWiiは、そもそも生まれながらにしてそういう開発環境には向いていないハードウェアだったのだ。

任天堂もその事にはだんだん気づいていったのだろうが、なにしろWiiが1億台も売れてしまったこともあって、HDゲーム機「Wii U」の発売に踏み切ったのは、遅れに遅れた2012年だった。しかも、今回もGamePadという、他のゲーム機にはないギミックを持ったゲーム機として登場したのだ。

Wii U ベーシックセット (WUP-S-WAAA)

Wii U ベーシックセット (WUP-S-WAAA)

 

ローンチ時こそ、GamePadの特徴を活かした(ように見える)ソフトが用意されたのだが、任天堂自身がセカンドスクリーンやリモートプレイ以上の新しいゲーム体験を見せられないまま現在まで来てしまっているようにみえる。サードパーティ製のゲームにヒットはなく、ここ数世代の任天堂のゲーム機同様、Wii U任天堂のゲームを遊ぶためのものといった状態になってしまっている。

しかも、リリース翌年にはソニーマイクロソフトが揃って次世代機(PlayStation4とXboxOne)の発表を行い、Wii Uは現世代機と次世代機のハザマのゲーム機のようになってしまった。当然、次世代機をリードプラットフォームとして作られたゲームは、Wii Uではグラフィックス面で劣ったバージョンだったり、そもそも発売されないという有り様になってしまっている。残念ながら、Wii Uがこれから盛り返してトップハードに成り上がる可能性は殆どゼロと言ってしまっていいだろう。

 

では今後、任天堂はどういう戦略を持ち出してくるのだろうか。

現在、欧米では「Amiibo」という、内部にNFCを仕込んだフィギュアが売れている。

amiibo マリオ (スーパーマリオシリーズ)

amiibo マリオ (スーパーマリオシリーズ)

 

日本ではそこまでのヒットには至っていないが、欧米では行列ができるほどの人気ぶりで、ニンテンドー3DSWii U GamePadNFCリーダーを使って内部のICチップにデータを読み書きできるのだ。 正直言ってこれがきっかけとなりWii Uが爆発的に売れるとは思えないのだが、延命処置程度にはなるだろうと思う。

 

くわえて、キャラクターのライセンスビジネスにも乗り出す考えを表明している。


任天堂社長:人気キャラのライセンス事業、新収益源に - 毎日新聞

いままであった、マリオ等のキャラクターとのコラボとどう違うのかがよくわからないが、記事を読む限り、スマートフォンのゲーム等で任天堂以外からマリオ達を使ったゲームがリリースされる可能性が高い。任天堂がハードウェア事業をやめるとはとても思えないが、時代に合わせて柔軟に考えを変えていくつもりなのかもしれない。

ちなみに、よく「任天堂はハードウェア事業から撤退してパブリッシャーになったほうがいい」という意見を見かけるが、それは全く同意する気にはなれない。かつてそういわれて意気揚々とパブリッシングに専念したセガが、いまどうなっているかを考えれば、自ずと答えは出るだろう。

 

個人的に、任天堂は「日本のディズニー」になれる唯一の会社だと思っているだけに、ライセンス事業はいい考えだと思う。当然、任天堂の審査も入るだろうから、クオリティの低いゲームが乱発されるような事態にはならないと思う。

いずれにせよ、まだ数年は掛かる可能性はあるが、任天堂は必ず復活するだろうと思っている。それだけのポテンシャルを秘めているし、なんだかんだでゲームを作らせたら世界一の会社なのだから。