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Yukibou's Hideout on Hatena

自分用備忘録的な何か。

レトロゲーム回顧録その8 MOTHER

「エンディングまで泣くんじゃない」

「綺麗なお姉さんは、好きですか」などで有名な、一倉宏の手による「MOTHER」のキャッチコピーだ。


【なつかCM】 ファミコン MOTHER (エンディングまで泣くんじゃない) - YouTube

マザー

マザー

 

「MOTHER」を初めて手に入れたのは中学生の頃だった。友達が「エンディングの前につまらなさすぎて泣いた」といって、貸してくれた…というより、実質的に譲ってくれたのだ。

あの印象的なCMを見て、ぜひ遊んでみたいと思っていた自分にとっては、渡りに船だった。そして、「MOTHER」はそのキャッチコピーに負けない、素晴らしいストーリーと世界観を持った名作だった。ただ、友達が「つまらなさすぎて」といったのも納得がいく部分はある。そこは後述しようと思う。

「MOTHER」は、「RPGといえば中世ファンタジー」という固定観念に挑戦し、成功した数少ないJRPGの一つだ。

舞台は現代に近い80年台のアメリカのどこか。主人公はPSI(超能力)を使える少年。家族には優しい両親と二人の妹、そしてペットの犬がいる。ただし、パパは単身赴任か何かでどこか遠くにいて、電話でしか連絡が取れない。

それまでのRPGとの最大の違いはそのマップサイズだ。町等はアイコンではなく、原寸大のフィールドとして描かれている。従来の、アイコンに接触して町に入る仕組みではなく、街道を歩いていると道がシームレスに町とつながっているのだ。そしてその広大なフィールドを移動するのに不便を感じさせないためか、斜め移動が出来る。この時期に斜め移動を実装していたRPGは「MOTHER」以外ではあまり思いつかない。


Mother (FC) Gameplay - YouTube

戦闘は、フィールドで敵とランダムエンカウントし、コマンド選択式の戦闘をするオーソドックスなドラクエタイプ。ドラクエとの最大の違いは、戦闘が終わってもお金がもらえないことだ。お金は戦闘の報酬として、電話の向こうにいるパパから、ATMに「お小遣い」という名目で振り込まれる。実際にお金を使用するためには、町等に設置されたATMまで赴いて引き落とさなければならない。

問題はこの戦闘のバランスがあまりよろしくないことで、自宅から最初の町まで行くためにも、ある程度のレベル上げを強いられる。フィールドが広い分、「移動しているだけ」の時間が長く、正直いって回復手段が安定するまでは、厳し目のバランスが続く。友達が「エンディングの前につまらなさすぎて泣いた」といった理由はこの辺りにあるんじゃないかと思う。

ちなみに、セーブの方式は、パパに電話して記録をしてもらうという、いわゆるセーブポイント方式だ。しかも、長時間遊んでいるとパパが「そろそろ休憩したほうがいいんじゃないか?」などと、心配して電話をかけてくる。

「MOTHER」には、上記のパパの話だけでなく、随所にシナリオライターの糸井重里によるユーモアが散りばめられている。

たとえば、誰もいない方向に向かって「はなす」コマンドを使うと「だれにはなしているのだ」と返されたり、各アイテムの一風変わった説明文、ユニークな戦闘メッセージ、ゲーム内での数々のメタ発言など、考えぬかれたテキストは本当に秀逸だった。この、ゲーム内の登場人物に糸井重里の人格が投影されているかのようなテキストは、MOTHERシリーズの大きな特徴となっている。そして、それは子供ではなく、かつて子供だった大人の方が最大限に楽しめるのだ。

ムーンライダースの鈴木慶一による楽曲も素晴らしいの一言で、ファミコンで上手いことドラムの音やジョニーBグッド丸出しのエレキギターの音なんかを再現している。


Mother 1 (EarthBound Zero) Music - Hippie Battle ...

詳しくは知らないが、このゲームのサウンドはカスタムチップを使ってないという話なので、これは素直に凄いと思う。

当然のことながら、サントラ(と言う名のアレンジアルバム)も買った。80年台のCDなので音質が残念というか、録音レベルが低いのが唯一の不満だったが、最近デジタルリマスターされたアルバムが復刻した(リリース自体は2004年だったらしい)ことを知り、AmazonMP3Storeでダウンロードした。しかも、「MOTHER2」のエンディング曲である「Smile&Tears」のデモトラックも入っている。もう最高である。

MOTHER

MOTHER

 

「MOTHER」の公式ガイドブックでもある「MOTHER百科」も、とても子供向けに作られた攻略本とは思えない素晴らしい出来で、個人的には今まで買った攻略本の中でも一番のお気に入りだ。あまりにお気に入りすぎて、復刻版が出た時に保存用として買ってしまったほどだ。

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このガイドブックは、ゲーム画面よりも実写の写真が多く使われている。まさに、「MOTHERの世界のガイドブック」なのだ。文章も旅行本のような仕立てで、読んでいるだけでも本当に楽しい。やり込みたい人向けの攻略本とは決して言えないが、ゲームの世界観とマッチした素晴らしい作りだと思う。

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久美沙織が書いた小説もある。 

MOTHER(マザー)―The Original Story (新潮文庫)

MOTHER(マザー)―The Original Story (新潮文庫)

 

でも、この小説に関しては、初期設定資料と作者が序盤をプレイした時の経験から書かれているものなので、原作であるゲームとは雰囲気が違う。なんというか、糸井重里的な「やわらかさ」ではなく、ジュブナイル小説的な作品になっている。残念ながら、個人的にはこの小説はそんなに印象に残っていない。今でも実家にあるけど、何度も読みたくなる作品という程ではなかった。

「MOTHER」が他のRPGと違うところはまだまだ沢山あるが、やはり最も特徴的なのはラスボス戦だろう。正直、当時はまったくのノーヒントでラスボス戦に挑んでいたので、最後の最後の隠された「仕掛け」に気がつくのに時間がかかった。でも、それに気がついた時には、本当に負ける気がしなかったし、これを仕込んだスタッフに感嘆したものだ。ゲームバランスが厳し目なだけに、このラスボス戦での仕掛けは効果絶大で、当時中学生だった自分でも、なぜ製作陣が「エンディングまで泣くんじゃない」というキャッチコピーを付けたのか、その自信を十分に悟ることが出来た。

その後、続編である「MOTHER2 ギーグの逆襲」が94年にスーパーファミコンで発売される。キャッチコピーは「大人も子供も、おねーさんも。」

だが、「MOTHER」は第一作目にして、すでに大人も子供もおねーさんも楽しめるRPGだったのだと、個人的には思う。