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自分用備忘録的な何か。

Jリーグに「ビッグクラブ」は生まれるのか。

ビッグクラブ待望論。

ここ数年、色々なサッカー関係のメディアや関係者がよく語る台詞がある。

 

Jリーグにもビッグクラブが必要だ」

 

個人的にはこの台詞はとても違和感がある。

そもそも、「ビッグクラブ」は必要だからと言って、造れるものなのだろうか? 一体誰がその「ビッグクラブ」を作る資金を出すのか? 「ビッグクラブ」が生まれることで、権力の一極集中など弊害は無いのだろうか? そういうことを考えた上で、そういう発言をしているんだろうか?…などと思ってしまうのだ。

実際、22年のJリーグの歴史の中で、自らがビッグクラブになろうとしたチームはこれまでもいくつかあった。そして、現在でもJリーグにはビッグクラブになれる資質を持ったチームがいくつかある。

 

ちなみに、個人的に考えている「ビッグクラブ」の条件はいくつかあって、

  1. 強い。多数のタイトルを、長期にわたって獲得し続けている。
  2. 人気がある。集客、視聴率等でその他のチームより圧倒的に支持されている。
  3. お金持ち。高額年俸を支払い、質の高い選手を集めることが出来る。
  4. 大都市のチーム。キャパの大きなスタジアムを埋めるには人口が必要。

他にも細かい条件はいくつかあるが、おおまかに言えばこの四つが必須条件だろう。

というわけで、過去、現在、未来の三つのパートに分けて、Jリーグにおける「ビッグクラブ」の可能性を考えてみよう。

 

鹿島アントラーズジュビロ磐田は、Jリーグにおいて多くのタイトルを獲得しているチームではあるが、「大都市」のチームとはいえないので、今回の検証からは外させてもらった。勿論、両チームともJリーグというドメスティックな領域では、ビッグクラブと言えるチームである。

 

過去における失敗したビッグクラブ。
ヴェルディ川崎

なんといっても最初に出てくるのは、Jリーグ初代チャンピオンにして、当時凄まじい人気を誇ったヴェルディだろう。

ヴェルディは、当時「サッカー界の巨人軍」を目指していた。高額の年俸で人気選手を多数所属させ、日テレでヴェルディの試合を中継し、地域密着を標榜するJリーグと対立して「読売ヴェルディ」という呼称を使い続けた。

川淵チェアマンがそのやり方に異を唱えると「新リーグを結成する」と脅しまでかけた。が、読売グループのボスである渡邉恒雄氏は、FIFAの傘下である日本サッカー協会所属の選手でなければ、W杯に出られないという事すら知らなかったのだろうか。当然、そんな「新リーグ」に所属する選手などいるわけもなく、結局この話は一瞬で立ち消えになった。

その後、ホームタウンとしていた川崎を出て、2001年に念願の東京移転を果たすも、すでにJリーグブームは去っており、地域密着という点でも出遅れたヴェルディは、ついに2005年にJ2降格。その後2008年に一度J1に昇格を果たすも、わずか一年で降格。その後は、幾度も経営危機を経験しながらJ2暮らしが続いている。

 

横浜フリューゲルス

1995年、突如として現役ブラジル代表であるジーニョ、エバイール、サンパイオの三人をブラジルのパルメイラスから引き抜き、シーズン前の話題を独り占めした。が、その1995年は加茂監督が日本代表に引きぬかれたり、選手の入れ替わりも激しかったりで低迷。翌1996シーズンはようやく補強戦力がフィットして3位と躍進する。

だが、1998年の10月に突然横浜マリノスとの合併が発表される。原因は、親会社である佐藤工業の経営不振と、全日空の「一社ではチームを維持できない」という方針によるものだった。現在では横浜Fマリノスの「F」にチーム名の名残があり、当時のフリューゲルスのサポーターを中心に、日本初のソシオ制クラブである横浜FCが作られた。

 

名古屋グランパス

浦和、ガンバ大阪とならんで「お荷物」扱いされていたグランパスが変わったのは、1995年のアーセン・ヴェンゲル監督就任がきっかけだった。

ヴェンゲル監督はストイコビッチを中心にしたチームに、パシ、トーレス、デュリックスなど、優秀だが割高ではない選手をピンポイントで補強。1stステージの出だしは出遅れたが、その後快進撃を見せ年間3位と躍進し、天皇杯ではチーム初のタイトルを勝ち取った。だが、その翌シーズンにヴェンゲル監督がアーセナルの監督に就任するためチームを離れると、下位と中位を彷徨う時代が続く。

2008年にレジェンドであるストイコビッチが監督に就任。積極的な補強の成果もあって2010年には優勝まで辿り着く。だが、その後は世代交代に失敗し、結局ビッグクラブにはなりそこねた。現在はクラブライセンス制度のラインをクリアするのに四苦八苦している。

 

セレッソ大阪

2014年、シーズン前に最も注目を集めたのは間違いなくセレッソ大阪だった。

前年度、柿谷曜一朗、山口蛍などの現役日本代表を中心に人気に火が付き、大いに注目されていたセレッソだが、2014年はそれをもう一歩推し進めて、ワールドクラスの選手を獲得した。それが、ウルグアイ代表ディエゴ・フォルランだった。

だが、それまでチームを育ててきたレヴィー・クルピ監督と契約を延長せず、FC東京でそれなりの成績しか残せていなかったランコ・ポポヴィッチを監督に招聘したが、余りあるタレントを活かしたチームを作れたとは言えずに途中解任された。

後任のマルコ・ペッツァイオリ監督が就任するとチームは更に低迷し、残留争いに巻き込まれてしまう。そして、降格するチームではよくあるさらなる監督交代劇が起き、下部組織のコーチを務めていた大熊裕司氏が監督に就任。フォルランやシーズン途中で獲得したカカウを使わないなど、チームの方針がまったく見えない状態で降格が決定。2015シーズンはJ2で戦うこととなった。

 

現在におけるビッグクラブ候補達。
浦和レッドダイヤモンズ

現在、日本で最もビッグクラブになり得るチームは、誰がなんといっても浦和レッズだろう。

国内最大のサッカー専用スタジアムをホームに持ち、観客動員数、収入、人気の面ではJリーグNo1。毎年大型補強を行い、年俸の面でも他のチームよりは恵まれているはずだ。

Jリーグ創設当初はお荷物チームと言われるほど弱く、1999年には屈辱の降格も経験するが、2004年には初のステージ優勝、2006年には念願の年間優勝、そして翌2007年にはACLで優勝し、ついにアジアの頂点に立つ。

当時は、ポンテやワシントンなど強力な外国人選手を中心に、オジェック監督が固いサッカーで勝つチームを作り上げていたが、「勝つだけではつまらない。面白いサッカーをしないと」という内外からの声に応え、フォルカー・フィンケや浦和OBのゼリコ・ペトロビッチを招へいし、魅力的なサッカーを展開しようとするも結果が出ず、2012年にはサンフレッチェ広島を指揮していたミハイロ・ペトロビッチにチームを託す。その後、主に広島から多数の選手を引きぬくが、終盤の失速という悪癖を治すことが出来ずに優勝から見放されている。

 

ガンバ大阪

浦和同様、Jリーグ創設当初はお荷物チーム扱いされていた。ヴェルディに5-0で負けた試合の後に、川淵チェアマンが「ガンバなんて消えてなくなれ」と言い放ったのは、いまでも忘れられない。

ガンバが変わったのは2002年に西野朗監督が就任してからだ。2005年に初のJ1での優勝を果たすと、2008年にはACLに優勝し、Jリーグでもほぼ安定して上位をキープし続ける強豪になった。

だが、毎年活躍する外国人選手を中東のチームに転売して引きぬかれてみたり、2012年には西野監督と袂を分かった挙句、謎のセホーン呂比須体制に移行したが、わずか3節で解任。その後はミスターガンバ松波にチームを託すも、結局J2降格となってしまう。

それでも一年でJ1に復帰すると、2014シーズンはJ1、ナビスコカップ天皇杯と、国内メジャータイトルを全て獲得。現在4万人規模のサッカー専用スタジアムを建設中で、このまま強さを維持できれば、浦和と同じくビッグクラブに必要な条件を揃えることが出来るかもしれない。

 

「造られたビッグクラブ」は成功しない。

過去を振り返って見ると、ヴェルディフリューゲルスセレッソと、大補強を敢行してビッグクラブになろうとしたチームは、日本においてはあまりうまくいっていない。

そもそも、ほとんどの国のビッグクラブは、長い年月をかけて自然発生的に生まれるものであって、一気にビッグクラブ化させるには相当のパワーとお金が必要になる。Jリーグの予算規模ではとてもじゃないがそんなに沢山のお金を注ぎ込むのは不可能というか、費用対効果の面であまりにもメリットがない。

だが、そんな中、新しい形でビッグクラブ化するかもしれないと言われているチームがある。横浜Fマリノスである。

 

未来のビッグクラブ?それともマンチェスター・シティ日本支店?

元はといえば、下記のスポーツ報知の報道が発端だった。

マンチェスター・シティを運営するシティ・フットボールクラブ(CFC)が、横浜Fマリノスを買収するという内容だ。Jリーグ日本法人設立を条件に外資の参入を解禁したわけだが、その第一号がマリノスであるというというのだ。


WorldFootballNews

※本当は元記事のスポーツ報知の記事を貼りたかったが、マリノス側の抗議があったのか、元記事自体が削除されているので、まとめサイトを貼らせていただく。

マリノス側はこの記事を即否定したが、実際問題CFCがマリノスを買収する可能性はそんなに低いわけではなさそうに思える。なぜなら、今シーズン突然監督がフランス人のモンバエルツ氏になったり、ブラジルU-21代表のアデミウソンのレンタル移籍加入が決まったりと、昨シーズンまでの緊縮財政からはちょっと様変わりした感があるからだ。

だが、万が一マリノスが CFCに買収されたとしても、真の意味でのビッグクラブにはならないだろうと思っている。単に、マンチェスター・シティの日本支店になるだけなのではないか。

たとえば、仮にアデミウソンがCFCの介入によって加入したものとして、マリノスで大活躍したとしても、次のシーズンには本国のマンチェスター・シティに移籍している…というような事が考えられるのだ。

これは、チェルシーフィテッセの関係に似ている。


フィテッセはチェルシーのオランダ支店!?|コラム|サッカー|スポーツナビ

もし、CFCが本当にマリノスを買収したとしても、それはシティで常時試合に出られる実力はなくとも、若くて才能のある選手を囲い込んでおくための、CFCによる策略のように思えるのだ。

 

ビッグクラブはあれば面白いが…

たしかに、ビッグクラブはあった方が面白いかもしれない。それは否定しない。だが、そんな体力もないのに無理やりビッグクラブ化しようとして失敗すれば、元も子もないことになってしまうし、外資の力を借りるにしても、よほど素晴らしいヴィジョンをもった組織でなければ、健全なビッグクラブ化はかなり難しいと言えるだろう。

 

Jリーグにもビッグクラブが必要だと声高に叫ぶのは簡単だ。

だが、一朝一夕に生まれるビッグクラブなど、幻想でしか無いのだ。