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Yukibou's Hideout on Hatena

自分用備忘録的な何か。

ハリルホジッチさんのおかげで昔のサッカーの勉強になりました。

W杯 ハリルホジッチ サッカー
未体験ゾーンだった80年代前半のサッカー。

先日、スカパーで、日本代表監督ハリルホジッチの現役時代(および欧州、W杯での監督時代)の試合を放送する「ハリルホジッチアーカイブマッチ」という企画があった。

soccer.skyperfectv.co.jp

今回見た放送カードは、1982 FIFAワールドカップスペイン大会のグループリーグ、ホスト国スペイン対ユーゴスラビア及びユーゴスラビアホンジュラスの二試合だ。

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自分の中で覚えている、最も古い代表チームのフルマッチ観戦(TV含む)は、メキシコW杯最終予選の韓国戦である。

田舎に住んでいるため、関東ローカルではもっと色々な試合の中継があったのかもしれないが、地方では当時マイナーだったサッカーの中継など、国体や高校選手権以外ではまるで無かった。というわけで、それより古いフルマッチの記憶となると、殆どない。

大学生時代に、1974年のオランダ対ブラジルのビデオを買って見たことがあるくらいだ。

Number DVD サッカー世紀の名勝負 オランダ VS ブラジル FIFA ワールドカップ 1974

Number DVD サッカー世紀の名勝負 オランダ VS ブラジル FIFA ワールドカップ 1974

 

なので、82年のW杯の映像というのは、例えばゴールハイライトなどでは見たことがあるが、フルマッチは全くの未体験ゾーンだったので、楽しみにしていた。いわゆる「モダンフットボール」が世界的に普及する前のサッカーは、どんな感じだったのだろうか、と。

 

トータルフットボールからモダンフットボールへ。

現代のサッカーは、ゾーンディフェンスが主流になっている。

ゾーンディフェンスは、自分たちのDFラインから前線までの間隔を30メートルほどに保ち、その狭いエリアの中で相手にプレッシングを仕掛け、奪ったら即反撃に転ずる攻守一体の戦術だ。

 

原型を作ったのはヨハン・クライフ擁するアヤックス及びオランダ代表を率いたリヌス・ミケルス

1971年にアヤックスでヨーロッパチャンピオンズカップを制した際に、すでに「トータルフットボール」と呼ばれる戦術は完成していたが、それが世界に向けて披露されたのは、74年のW杯西ドイツ大会だった。

だが、当時は「未来のサッカー」といわれたトータルフットボールを、他のチームがコピーするのはほぼ不可能だった。あれは不世出の天才であるクライフと、ニースケンスを始めとする、臨機応変に状況対応できる選手たちがいてこその戦術だったのだ。

それに、そのオランダ代表の大部分の選手たちは、アヤックスバルセロナでミケルスの指導を受けた選手たちだった。つまり、74年のオランダは代表チームとはいえ、クラブチーム並の成熟度を備えていたのだ。

 

そのトータルフットボールを、ある程度噛み砕いてわかりやすく体系化したのが、80年代の終わりからACミランを率いたアリゴ・サッキだ。

彼は、ポジションの概念があってないようなものだったトータルフットボールを、もう少し約束事を増やしてシステム化した。要は、特定のタレントがいなくても、タスクをこなすことの出来る選手がいれば、トータルフットボールに近い事が実践できるようにしたのである。といっても、攻撃面はオランダトリオの比重がかなり大きかったのだが…

ともあれ、サッキのミランが欧州を席巻したことで、サッキ式のゾーンディフェンスは、モダンフットボールの先駆けとして世界中に広まることになる。90年代後半には、ディフェンスの部分がより進化して、サッカー全体が守備的になるという弊害も生まれた。

そういえば一時期の日本では、加茂監督が造り出した「ゾーンプレス」という名前がスタンダードな戦術名になっていたが、あの造語はモダンフットボールを一言で言い表した秀逸な名前だったと思う。

 

ゾーンディフェンスの実践法

サッカーのピッチは、概ね縦約110メートル、横約70メートルの範囲である。だが、オフサイドルールがあるため、実質的なプレーエリアはDFラインとFWまでのエリアになる。ゾーンディフェンスは、そのエリアを縦約30メートルにまで圧縮することで、選手間の距離を近くし、ボールを奪いやすくする。

選手は自分の守備ゾーンに入ってきたボールホルダーをマークする。だが、捕まえきれなくても、近くの味方とマークを分担(受け渡し)しながら、なるべく陣形を保つようにする。そうすることで、相手選手に引っ張られてフォーメーションが乱れてしまうことを防ぐ事ができる。ゾーンディフェンスにおいて、もっとも重要なのはスペースを埋めることだからだ。

さらに、ボールを奪ってカウンターを仕掛けるときも、理論上ボールを持った選手の近くには多くの味方がいるはずなので、容易に攻め上がることが出来る。その時には、一気にDFラインを押し上げ、相手のFWがオフサイドを気にして戻らざるを得なくする。

勿論、チームの約束事によってラインのコンパクトさは変わってくるし、大体の場合、縦だけでなく横も圧縮する(絞る)。そうすることで、敵味方全体が一方のサイドに集まるので、ボールを奪った時に逆サイドにスペースが生まれる。攻撃時はこのスペースを利用するのがセオリーだ。

だが、これは両刃の剣でもある。プレッシングをかわされてしまった時に逆サイドにボールを振られると、あっという間に数的不利の状況を作られてしまうのだ。ザックジャパンはこの絞った逆サイドを簡単に使われてしまっていたが、そこを最後まで修正することは出来なかった。 ハリルジャパンは、まだ二試合見ただけだが、逆サイドをある程度ケアしているように思える。

 

ある意味新鮮だった82年のサッカー。

スカパーで放映された82年スペイン大会の映像は、ある意味新鮮だった。

ハリルホジッチのプレーに関しては、後藤健生さんの下記コラムに詳しく書いてあるが、典型的なCFといった感じだった。

www.jsports.co.jp

 

試合自体の話であるが、まず、当時と今ではルールが違う事を念頭に置いて見なければならない。

なんといっても、当時はまだバックパスルールが無く、DFが足で戻したボールでもGKは手で扱うことが出来た。DFラインでボールを持った時に、攻撃の準備が出来ていない場合などは、そのままGKにボールを戻したりしていたのだ。

この二試合でも、DFラインからGKにボールを戻し、そこからまたすぐ近くのDFにボールをパスし…などというやり取りが結構あった。しかも、いまだったらGKがゆったりとDFにパスを出したりした日には、猛然とFWがプレスに行ったりするものだが、当時のFWは我関せずと言った感じで、ボールも見ずにチンタラ歩いているだけだった。まあ、プレスを仕掛けてもGKに戻されてしまうので、やるだけ無駄なのではあるが。

あと、どういうわけかGKが殆どパントキックをしない。セービングしたとしても、また近くのDFに緩いパスを出すというシーンが殆どだった。当時はGKに足技が求められていなかったから、キックに自信のあるGKが少なかったのだろうか?

中盤の守備も、マンマークがメインなので、ボールの奪い合いをしている選手の側にいる味方が、ゆっくり歩いているだけだったりで、いわゆる「チャレンジ&カバー」が殆ど無い。なかには、ボールをカットしに行ったがかわされてしまい、そのまま画面外に消えていった中盤の選手もいた。あれにはちょっとビックリした。

現代のサッカーを見慣れていると、ラインは間延びしていて広大なスペースがあり、前線の選手はたいして守備をしないし、DFラインもペナルティエリア内まで平気で後退してしまっている。だが、当時はこれが当たり前であり、これが世界最高峰の大会で披露されていたサッカーだったのだ。

 

サッカーは進化している。

90年代、自分が見たJリーグの試合で一番面白いと思っていたのは、94年のチャンピオンシップだった。TV放送を録画しておいたビデオでは飽きたらず、当時はJリーグの試合のビデオが発売されていたので、レンタル落ちのその試合のビデオを買って保存版にしていた。

だが、1999年頃に東京での仕事をやめて地元に帰ってきた時に、暇だったのでそのビデオを見返したところ、酷く退屈だった。スピードはなく、ラインは間延びしていて、プレッシングも緩慢に見えた。ぶっちゃけて言ってしまうと、つまらなかったのである。

つまりは、それだけ現代のサッカーは進化しているのだ。

初めて触れた82年のサッカーは、今の基準からすれば突っ込みどころが満載だった。だが、この時代のサッカーが今でも遜色のない輝きを放っていたら、それはつまり、この30年以上にわたってサッカーが停滞していたという事を意味するわけで、見ていてあまり興奮を覚えることがなかったのは、逆に良いことだったのかもしれない。

 

ハイライトではサッカーはわからない。

今でもYouTubeなどでは古いサッカーの動画を見ることが出来る。だが、そのほとんどはハイライトだ。どんなに古いサッカーでも、ハイライトはいい所を切り出したものなので、その当時の空気のようなものは感じ取ることが出来ない。

やはりハイライトよりもフルマッチなのだ。

今後も、出来ればこういった「サッカーが本格的に商業化される前の時代の試合」を見る機会があれば、是非見たいと思っている。

返す返すも、メキシコ五輪の銅メダルを獲得した試合のフルマッチ映像を録画し忘れたのは痛恨の極みだった… 

www.j-cast.com

もう一度放送してくれませんかねぇ。NHKさん。