Yukibou's Hideout on Hatena

自分用備忘録的な何か。

非モテ・キモオタだった俺が本気で恋をした時、危うくストーカーになりかけたって話。

その娘の名はルンルン。

それは、自分がまだ東京にいて、外食産業で働いていた頃の話。

自分はその頃、体重が今より40kg以上多い100kg近くあり、服にもそれほど気を使わない、いわゆる今で言う非モテ・キモオタだった。しかも女性と話すのが苦手で、飲み会などに行っても、いじられることはあっても、目立つことはまるで無い人間だった。

そんな自分だが、働いていたお店では、まじめに働いていたせいか、バイトやパートの女性と仲良く仕事が出来ていたし、普通に話もしていた。まあ、あっちが自分が社員だからということで、気を使ってくれていたんだろうとは思うが、それでもそれなりにプライベートな話をしたりして、それなりに打ち解けていたとは思う。

そして、そんな中でもひときわ自分に優しくしてくれた娘がいた。彼女の名はルンルン(あだ名です)。

ルンルンは変わっていた。

趣味はイラストを描くことだと言っていたし、好きなテレビ番組は時代劇と言ってはばからない。平たく言えば天然オタク少女だったのだ。

非モテ・キモオタの自分にとって、ルンルンは他のバイトの娘とは違って、趣味が近い(要はオタク趣味)という事もあって、なんだか存在そのものを身近に感じた。

見た目も、そのころヒット曲を飛ばしていた「ヒステリック・ブルー」のTAMAに似ていて、他の人はどう思うか知らないが、普通に可愛いといえるレベルだった。

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※上の画像はイメージです。

そんな娘が、自分と仲良くしてくれるというだけで、なんだか小さな幸せを感じていたのだが、ある日、自分に決定的な勘違いをさせる事件が起きた。

 

どうすればいいのかわからないこの想い。そう、それは恋。

それは、仕事が終わった後、一人出てくるのが遅くなったバイトを、皆でテナントビルの前で待っていた時だった。

自分はその頃タバコを吸っていたので、一人灰皿の近くでタバコをふかしていた。

そこへルンルンが近づいてきて、自分の口からタバコをそっと取って、一口吸い込んだのだ。タバコなんて吸ったことのないルンルンは、ゴホゴホとむせって、「まず〜い」と言いつつ、自分の口にそっとタバコを戻した。

自分は、その時、これ以上ないくらいドキドキしていた。

今のは一体何だったんだ!?

ひょ、ひょっとしてルンルンは自分のことが好きなのではないか?という思いが頭から離れない。家に帰ってからもずっとそのことばかり考えていて、結局その日は一睡も出来なかった。

それからというもの、自分の頭はルンルンの事でいっぱいになってしまった。あの屈託のない笑顔を思い浮かべただけで、心臓の鼓動が早まるのがわかった。

バイトのシフトでルンルンが入っている日があると、嬉しい気持ちとドキドキする気持ちが入り混じった、なんとも言えない感情が自分をはやし立てた。そして、自分はひとつの結論を出さざるを得なくなる。

間違いない。自分はルンルンに恋をしているのだ。

 

告白、そして…

恋をするのは初めてではない。

だが、ひょっとしたら自分が好かれているのかもしれないと感じたのは、それが生まれて初めてだった。

しかしながら、バイトと社員という、近いようで遠い立場である。正直、どうすればいいのかわからなかったし、ましてや告白したりしていいのかどうか、悩みに悩み抜いた。

そして、結局自分一人では結論を出すことが出来ずに、バイトの女子に相談することにした。その女子は、お店のバイトの古株で、いわばバイトリーダーのような存在だ。自分も彼女には随分助けられた。顔がIZAMに似ていたので、ここではIZAMと呼ばせてもらうことにする。

IZAMに悩みを打ち明けると「マジで〜!? でも、なんだか仲良いと思ったんだよね〜! 告白? するべきだよ絶対! 大丈夫だよ!」と、根拠の無い太鼓判を押してきた。

だが、その一言で自分の気持は固まった。というより、誰かに背中を押してもらいたかっただけなのかもしれない。

ルンルンに告白しよう。

お店が終わったタイミングでというのも何度も考えたが、それだとあまりに時間が遅くなってしまうし、ルンルンにも迷惑だろうと思い、お互いが休みの日を見計らって告白することを計画した。

お店の緊急連絡網で、ルンルンの家の電話番号は知っていた。あの頃は、誰もが携帯電話を持っていたわけではないのだ。ルンルンと連絡を取りたかったら、実家に電話をするしか無い。どう考えても職権濫用である。

突然実家に電話がかかってきて、ルンルンはとても驚いていたが、自分の「今から会いたい」という申し出に素直に応じてくれた。

自分の前に姿を現したルンルンは、なんだか天使のように見えた。赤いダッフルコートを着た天使。今にして思えば、恋は盲目という格言は本当である。

で、いざ本人が目の前に現れてみると、なかなか想いを言葉に出来ない。

踏ん切りが付くまでの時間稼ぎに、適当に街を歩いてカフェで軽食をとる。ちょうどオヤツ時だったし、自分としては自然な流れを作っているつもりだった。

そして、夕方になり、ルンルンも「いい加減帰らないと」と言い始めた。

あの時の自分は、本当に情けなかったと思う。言いたいことがあるのにもかかわらず、それをなかなか切り出せずに、ルンルンを引き止めておくことしか出来なかったのだ。

だが、数十分経った頃にようやく踏ん切りがつき、ルンルンに告白をした。

ルンルンの反応は、微妙なものだった。自分には、困っているように見えた。少なくとも、期待していたような反応ではなかった。

その日は、とりあえずそれだけで別れた。想いをルンルンに伝えられたというだけで、自分の中ではなにか達成感のようなものがあった。

本当の事件はその後に起きることも知らず。

 

去りゆくルンルン。打ちひしがれた自分。 

その次の日は、ルンルンがシフトに入っていた。自分は、思いを伝えることが出来た達成感と、会った時にどんな反応をされるかという不安が入り混じった複雑な思いで、ルンルンが出勤してくるのを待った。

バイトに出てきたルンルンは普通だった。

特に自分を避けるわけでもなく、かと言ってベタベタするわけでもなく、とにかく普通だった。自分はある意味ホッとした。

だが、その日の仕事が終わった後、ルンルンが店長に何かを告げ、小走りで店を出て行くのを見た。店長に何があったのかを聞いて、自分は愕然とした。

「なんか知らんが、アイツ、今日でバイトやめるってよ」

どう考えても、自分の告白が原因なのは間違いない。今すぐ後を追いかけたかったが、そんなことをすれば、自分が原因だと皆に言いふらしているようなものだ。自分は、平静を装って閉店作業を続けた。

その日から、悩み続ける日々が始まった。

彼女は何故、バイトをやめてしまったのだろう。いや、それは自分のせいなのは間違いない。あの、煮え切らない告白の仕方が悪かったのだろうか。いやいや、それ以前に自分が好かれているという前提が間違っていたのではないか…

考えてはみるものの、答えなど出るはずもなく、あるのはルンルンが自分の前から消え去ったという現実のみだった

IZAMに相談してみようかとも思ったが、あの告白した日の自分の情けなさを思うと、IZAMにもなかなか話を切り出せなかった。

 

偶然見つけたもの、それはルンルンの家。

閉店作業が長引いて終電を逃してしまったある日、タクシーで帰ると5000円近くかかってしまうので、仕方なくファミレスで朝まで過ごそうと考え、いつもは行かない方向へと歩いていた。

ふと、ルンルンが「駅のすぐ近くに住んでいる」と言っていたことを思い出した。確か、大通り沿いですぐわかると前に話していたはずだ。周りをキョロキョロしながら歩いて行くと、その家はすぐそこにあった。

自分は、少しの間、その家の前で立ち尽くしていた。

出来れば、なぜ自分の前から去ってしまったのかを問い正したい。いや、そんなのわかりきっているじゃないか。どこの世界に、巨漢のキモオタに告白されて、それに応じるヒステリック・ブルーがいるんだ。釣り合っていなかったんだよ、そもそも。

その時代に「ストーカー」という言葉があったかどうかは定かではないが、夜中に人の家の前に立ち尽くしている自分は、他人から見ればまさにストーカーに見えただろう。万が一にも見つかって通報されてはならないと我に返り、そそくさとその場を去った。

愛する妻がいて、二人の愛の結晶である娘が生まれた現在でも、この一件は思い出すことがある。そして、その度に罪悪感を感じるのだ。あの時の自分に、分不相応であると自ら言い聞かせる度量があれば、ルンルンが自分の前から去ることもなく、あの小さな幸せをもっと長い間享受していられたのに。

そんなことを今でも考えてしまう自分は、やはり器が小さいな、と思ってしまう。

自分は、あれから十数年経って、家庭という幸せを手にしている。

ルンルンは、この同じ空の下で幸せに暮らしているだろうか…