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自分用備忘録的な何か。

なでしこジャパンvsオーストラリア じっくりマッチレビュー FIFA女子W杯カナダ大会。

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「マチルダス」との対戦。

ここまですべての試合で1点差の勝利で粘り勝ちをおさめ続けているなでしこジャパンが、準々決勝でオーストラリアと対戦した。

オーストラリア女子代表といえば、「マチルダス」という愛称で有名である。

確かシドニーオリンピックの頃だったと思うが、オーストラリアの女子代表が、現地では定番の女性名「マチルダ」を愛称として使い始めた。ひょっとしたらもっと前からそう呼ばれていたのかもしれないが、注目されたのはその頃だ。この時の「マチルダス」は、注目を集めるためにヌードカレンダーなども発売していた。

それに倣って、女子日本代表にも愛称を付けようと、日本サッカー協会の女性スタッフが提案し、公募された中から2005年に名付けられたのが「なでしこジャパン」だ。いわば、マチルダスは、なでしこジャパンの先輩のようなものである。

マチルダスとは、2014年のアジアカップ決勝でも対戦しており、その時はDF岩清水のゴールを最後まで守りきり、なでしこジャパンが優勝を手にしている。

それから1年とちょっと経って、再び両者は相まみえる事となった。今度はW杯の準々決勝というステージで。

そんな対オーストラリア女子代表戦の、なでしこジャパンのスタメンは、オランダ戦と同じ11人。

GK:海堀あゆみ
DF:有吉佐織、熊谷紗希、岩清水梓、宇津木瑠美
MF:川澄奈穂美、阪口夢穂、宮間あや、鮫島彩
FW:大野忍、大儀見優季 

佐々木監督の中でも、今大会でのメンバーが固まりつつあるのかもしれない。 

 

前半から試合を支配したなでしこ。

今大会でのマチルダスの試合は、アメリカとのグループリーグ初戦の1試合だけを見ている。その試合では、前半開始早々からマチルダスが前線から積極的なプレッシングを敢行し、アメリカがかなり苦しんでいた。

前半12分にラピノーのやや幸運なゴールが決まってアメリカが先制しても、マチルダスの勢いは衰えない。だが、30分過ぎ辺りから、マチルダスは運動量がガクッと落ちてしまい、その後はしたたかなアメリカの試合運びもあって、結局3-1でアメリカが勝った。

その印象が強く残っていたせいか、自分の中でマチルダスは「積極果敢にプレスをかけてくるが、ペース配分が上手くない印象。前半に失点しなければ怖くない」という評価だった。

だが、この試合は違った。マチルダスは、現地時間14時キックオフという事も考慮したのか、前線からのプレッシングはせずに、どちらかと言うとリアクションサッカーをしてきた。

これが、なでしこがそうさせなかったのか、それともマチルダスの今日の作戦だったのかはわからない。だが、佐々木則夫監督が試合の後インタビューで「想定外だった」と言っているように、おそらくはマチルダス側の作戦だったのだろう。

省エネでなるべく失点しないように試合を運んで、少ないチャンスをモノにして勝つ。これが、マチルダスがなでしこに対して取ってきた、勝つための作戦だったと考えるのが普通だと思う。

なでしこジャパンは、いつもどおり選手間の距離を適切に保ち、長短のパスを織り交ぜながら試合を進めていく。

前半8分には大野が後方からのロングパスにループシュートを放つが外れてみたり、22分に川澄からのクロスにまたも大野がヘッドで合わせるが枠に飛ばなかったり、CKも次々と獲得するが、なかなか点に繋がらない。

だが、試合全体を見れば、確実にボールを支配してチャンスを作り出しているなでしこと、それに対応しながら時折散発的にカウンターを狙うマチルダスという構図は変わらなかった。

 

粘りに粘って、得点をもぎ取ったなでしこ。

後半、開始からややマチルダスがハイプレスを仕掛けてくる。だが、なでしこはその時間帯をしのぎ、また前半のような展開に持ち込んでいく。

ボールを回されているマチルダスは当然ながら、なでしこの方にも疲れが見え始める。中盤での不用意なミスからボールを奪われ、ピンチを迎える場面が見られるようになってきた。

試合の展開を考えると、なでしこが負けるとすれば、こういうミスからのボールをゴールに繋げられ、そのまま守りきられるという事態くらいしか考えられなかった。そういう意味では、後半の9分頃に見られた阪口のミスからゴール前まで持ち込まれた場面はかなり危なかった。

その後、なでしこジャパンが立て続けにチャンスを作る。

後半14分には、川澄からオーバーラップしてきた有吉にボールが出て、エリア内に低いクロスを入れる。飛び込んできた宮間がヒールで合わせるが、残念ながら得点は奪えず。さらに後半30分には、川澄のクロスに大儀見が完璧に合わせたかに見えたが、惜しくも枠を捉えることは出来なかった。

だが、マチルダスは運動量が確実に落ちてきている。どこかで1点取れれば、なでしこがかなり勝利に近づくことは明らかだった。それだけに、どうしても先制点が欲しかった。

そして、ようやく待望のゴールの瞬間が訪れる。

延長の可能性が見え始めた後半42分、大野と交代で入っていた岩渕真奈のプレーから得たCK。宮間がニアに蹴ったボールを宇津木がシュート。しかし、オーストラリアDFがゴール前で体を張って守る。だが、そのこぼれ球に岩清水が詰め、さらにこぼれた所にいた岩渕が押し込んで、ついになでしこジャパンが先制する。

その後、追加タイムでのマチルダスの最後の抵抗を、なでしこがしたたかに凌ぎ切り、2大会連続の準決勝進出を決めた。

 

「なでしこらしさ」で勝ち進んできたなでしこジャパン。

前回大会の優勝以降、なでしこジャパンを取り巻く環境は劇的に変わった。そして、彼女たちを見る目も変わった。勝つだけでなく、「華麗に勝つ」「大勝する」ことが期待されるようになった。

だが、本来なでしこジャパンが持っていた「なでしこらしさ」というものは、こういった粘り強く相手に食らいついて、その中で生まれたチャンスをしっかりモノにして勝つというものだったはずだ。

世界チャンピオンという称号が、その「らしさ」を曇らせていたのは少なからずあるだろう。

だが、W杯が始まり、彼女たちは本来持っていた「らしさ」を取り戻した。それを如実に表しているのが、ここまでの試合が全て1点差であるという事、そして、すべての試合で勝利しているという事実だ。

例えば、セルジオ越後のような「辛口御意見番」なら、組み合わせに恵まれたからだと言うだろう。なんといっても、ドイツ、フランス、アメリカといった優勝候補とは決勝に勝ち進むまで当たらない山に入ったのだ。

それでも、彼女たちが「ひたむきに勝利に向かって献身的な戦いを続ける」という本来の姿を取り戻したことは、期待されるW杯連覇に向けて明るい材料であることは間違いないし、評価されてしかるべきだろう。

次は中三日で準決勝である。順調に行けば開催国のカナダと対戦することになるかもしれない。今までの試合とは違って、完全アウェーの雰囲気に包まれることなるだろうし、観客が増えることでコーチングなども通りにくくなる。

と、思っていたら、カナダはイングランドに1-2で敗れ、完全アウェー状態での試合というシチュエーションはなさそうな状況になった。

だが、イングランドは、前回のW杯で唯一黒星を喫している、いわば因縁の相手。そういう意味では、嫌なイメージの残っている対戦相手とも言えるだろう。前回大会に出場した選手が多いだけに、ひょっとしたら、なにか重圧のようなものを感じているかもしれない。

だが、「らしさ」を取り戻したなでしこジャパンならば、その重圧もきっと跳ね返してくれると信じている。