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Yukibou's Hideout on Hatena

自分用備忘録的な何か。

なでしこジャパンvsイングランド じっくりマッチレビュー FIFA女子W杯カナダ大会。

なでしこ サッカー W杯 じっくりマッチレビュー

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サッカーの母国との対戦。

W杯連覇を目指すなでしこジャパン。

大会前は、その強化や世代交代の遅れなどから、かなり不安視されていたが、なんだかんだでベスト4まで駆け上がってきた。それも、単に勢いで凌いできたのではなく、なでしこらしい粘り強い戦いぶりで一つ一つの試合をものにして、チームとしても、どんどんまとまりが出てきたように思う。

親善試合やグループリーグでは、まだメンバーを決めかねていたのか、スタメンも試合毎に違っていたりしたが、決勝トーナメントに入ってからは、完全にメンバーが固定された感がある。

対するイングランドは、前回大会で唯一の黒星を喫した相手。しかも、これまで戦った4試合で、2分け2敗となでしこはイングランドに勝ったことがない。前回大会に出た選手は嫌なイメージが残っているかもしれないし、イングランドの選手にしてみれば、開催国カナダを下しての初の準決勝進出ということで、まさに勢いに乗っていると言ってもいいだろう。

イングランドは言わずもがなサッカーの母国ではあるが、どうしても「サッカーは男のスポーツ」というイメージが根強く、欧州内でもドイツやフランスと比べて存在感がやや薄い。彼女たちも、なでしこを倒しW杯で優勝することで、そのイメージを払拭したいとの思いもあるだろう。

というわけで、イングランド戦のスタメンは以下のとおり。

GK:海堀あゆみ
DF:有吉佐織、熊谷紗希、岩清水梓、鮫島彩
MF:川澄奈穂美、阪口夢穂、宇津木瑠美、宮間あや
FW:大野忍、大儀見優季

佐々木則夫監督が信じた11人、そして、ベンチメンバーや怪我で離脱した安藤梢の23人全員が出場し、ここまで勝ち上がってきたのだ。是非この試合も勝って、2大会連続、ロンドン五輪も含めれば三大会連続でのアメリカとの決勝戦に臨みたい。

 

いきなりのピンチで始まった前半。

開始早々の1分、ゴールキックのこぼれ球に反応したテイラーが、背後に浮かせたボールで上手く熊谷をかわし、ファーサイドへシュートを放つが、枠をそれる。その後も、イングランドが押し気味に試合を進めるが、なでしこも決定的なチャンスを許さない。

前半20分くらいになってくると、なでしこがボールを持つ時間帯が長くなってくる。だが、イングランドにしてみればそれは想定内のことだろう。彼女たちは男子同様、手数をなるべくかけずにゴールに直接向かうような、いわゆるダイレクトプレーが信条のチームなのだ。

そしてこの時間帯になって、ようやくなでしこにもシュートが生まれる。中盤でボールを繋いで鮫島がミドルを狙うも、枠を大きく外してしまう。

待望の先制点は前半30分。後方からのロングボールに抜けだした有吉がエリア内で倒され、なでしこがPKを獲得する。キッカーは勿論キャプテンの宮間。何度も駆け引きをした末に蹴りこんだボールは、完全にキーパーの逆を付いていた。

先制を許したイングランドだったが、そこから圧力を強めてくる。そして、前半39分に大儀見がホートンを倒したとされ、今度はイングランドがPKを獲得する。これをウィリアムズがしっかり決めて、試合は振り出しに戻った。

そのすぐ後の前半43分には、宇津木がループ気味のボールを放り込むが、ネットを揺らすことは出来ず。

そもそも、ポゼッション志向のなでしこと、ダイレクト志向のイングランドは、お互いに持ち味を出し合った場合、お互いに相性が悪い相手であり、やりにくいゲームになるのは、ある程度試合前からわかっていた。

しかも、選手たちが試合後に語っていた通り、この試合のなでしこジャパンは、あえてラインを下げることで、イングランドのロングボールに真っ向から向かっていく作戦を取っていた。そのことが、余計に膠着した展開を生んだのかもしれない。

とにかく前半は、一進一退の攻防が続いて終わった。

 

最後の最後でドラマが待っていた後半。

後半が始まっても、なでしこが前線になかなかボールを運べない展開が続く。無理もない。あえてそういうプランを選択したのだから。

対するイングランドはロングボールでダイレクトプレーを狙ってくる。そのまま拮抗した展開が続くが、後半も15分を過ぎてくると、だんだんイングランドが攻勢に出てくる。

後半17分、ダガンがペナルティエリアの手前で素晴らしいワントラップからボレーシュートを放つが、クロスバーを直撃し、なでしこは難を逃れる。

その2分後には途中出場のホワイトがエリア手前中央からシュート、左隅に飛んだボールは海堀がビッグセーブを見せて弾き出した。その後のCKも、中央で上手く合わせたスコットのヘッドは味方に当たり枠を逸れた。

後半25分、佐々木監督は大野に変えて岩渕を投入する。もはやこの交代も定番になってきたが、ここからなでしこはペースを取り戻す。

交代投入からわずか3分後の後半28分には、岩渕が左サイドからドリブルで切り込み、シュートを放つが枠の外。後半31分には、宮間のクロスに阪口が合わせるが、これも枠を捉えられない。

その直後、イングランドのロングボールが長くなったとおもいきや、日本のゴールマウスを捉えかける。こういうボールで失点してしまってはたまらない。体力的にも厳しい時間に入ってきたが、なでしこたちはこのプレーで気を引き締めなおす。

残り時間がだんだん少なくなってくるが、佐々木監督は延長のことが頭にあるのか動かない。90分で決められなくても、120分あれば点は取れるとふんでいるのか。対するイングランドは後半40分に最後のカードを切る。この違いが吉と出るか、凶と出るか。

この賭けに勝ったのは、佐々木監督のほうだった。

後半追加タイム。なでしこが最後のカウンターを仕掛け、熊谷からボールを受けた川澄が緩いクロスを送る。すると、このボールに反応したイングランドDFのバセットの足にボールが当たり、そのままボールはクロスバーを叩いてゴールに吸い込まれていった。

 

イングランドに無くて、なでしこにあったもの。

準決勝に進出した際、アーセナル・レディースに所属するストーニーは、アーセナルの公式サイトでインタビューに応え、次のように語っている

「準決勝に進出するまでには、チーム全員の力が必要だった。この女子たちを誇りに思っている。これまでのキャリアの中で最高の感覚だわ。驚くほどにね」

そう、彼女たちにとって、初めてのW杯準決勝という舞台は、ある種一つの到達点でもあった。

だが、なでしこは違った。

オランダ戦の後、試合後のインタビューに応じた宮間は「もう一度一番高い所に立ってからがスタートですから」と語っている。なでしこの面々にとって、W杯の準決勝はひとつの通過点にすぎないのだ。

なんと頼もしいことだろうか。

自分もこのエントリの冒頭に書いたが、事ある毎に「W杯二連覇を目指すなでしこジャパン」と言われ、期待され、注目され、おそらく決勝に辿り着けなければ「失敗」と言われる事は想像に難くないプレッシャーの中、期待通りに決勝まで駆け上がってくるのは、そうそう簡単なことではないのだ。

自分はセルジオ越後のような「辛口御意見番」ではないので、とても彼女たちが「組み合わせに恵まれたから…」などとは、口が裂けても言えない。

 

4年前、W杯の決勝という舞台は未体験ゾーンだった。

だが、今回は違う。

世代交代に遅れが見られるとはいえ、このシチュエーションになれば必要になってくるのは、「勝ったことがある」という経験であり、成功体験だ。いまのなでしこにはそれがある。そして勿論、対戦相手のアメリカにも、それはある。

日本とアメリカのどちらが勝ってもおかしくない。まさに、世界の女子サッカーの潮流をリードする2カ国が雌雄を決するのが、このW杯の決勝なのだ。

その一翼を担うのが、我らがなでしこジャパンであることが、素直に誇らしい。