Yukibou's Hideout on Hatena

自分用備忘録的な何か。

レトロゲーム回顧録その30 F-ZERO

任天堂が放った16ビット機であり、誰もが知っている国民的ゲーム機スーパーファミコン(以下SFC)。その栄えある同時発売ソフトはご存知「スーパーマリオワールド」と、この「F-ZERO」であった。

www.youtube.com

F-ZERO

F-ZERO

 

 F-ZEROは、新規タイトルであることから、当初は地味な存在だと思われていた。

雑誌でも盛んに取り上げられていたが、写真ではその凄さがいまいち伝わらなかったのか、そこまで話題になっていた記憶が無い。むしろ、その1か月後に発売が予定されていた、グラディウスIIIやファイナルファイトなどの、アーケードタイトル移植作のほうが盛り上がっていたように思う。

だが、実際に発売され、一度でもプレイした人間なら、F-ZEROは明らかに今までのレースゲームとは一線を画していることが分かったし、このゲームこそがSFCの機能を最大限に活かしたタイトルであることを感じ取れたはずだ。

誤解を恐れずに言ってしまえば、F-ZERO以前と以後では、レースゲームの仕組みがまるで変わってしまった。それほどの衝撃をゲーム業界にもたらしたのだ。

 

SFCが搭載した機能の最大の特徴は、「回転・拡大・縮小」機能だった。他にもモザイクとか多重スクロールのためのバックグラウンドとか多彩な音を鳴らせるFM音源とか色々あるが、とにかく最大の売りは「回転・拡大・縮小」だったのだ。

F-ZEROは、この機能をうまく活かして、レースゲームのコースを作った。

どういうことかというと、まず背景の一枚絵に普通にコースのレイアウトを書き込む。そして、手前側を拡大し、奥側を縮小すると(イメージとしては、絵を奥に倒す感じ)擬似的な立体コースが出来る。そして、自機を常に真ん中に表示して、そこを軸として背景自体をコーナリング時に回転させる。こうすることで、あたかも本当に自機がコースを走っているように見せることが出来るのだ。

f:id:potatostudio:20150704135647j:plain

 ※F-ZEROの画面。手前が拡大されて、奥が縮小されているのがわかる。

それまでのレースゲームは、奥から手前にオブジェクトを拡大表示(あるいは書き換え)し、ラスタスクロールで左右に歪ませることでコースを表現していた。だが、これだと基本的にインに張り付いて走る方法、俗にいうインベタが最短コースとなり、実際のレースを再現しているとは言いがたかった。

f:id:potatostudio:20150704135926j:plain

※アウトランの画面。ラスタースクロールでコースを表現している。

F-ZEROは、この新しい表現方法を使って、レースゲームを根本から変えてみせた。アウト・イン・アウト等の実際のレースの定石や、ヘアピンカーブなどの多彩なコースレイアウト、そして、逆走なども表現できるようになったのだ。

そして、このゲームの最も特筆すべき点は、そのスピード感だろう。F1を超えた未来のカーレースという触れ込みに嘘偽りはなく、時速400キロを超えるスピード感を見事に表現してみせた。従来のレースゲームでも時速数百キロというスピード感を持つレースゲームはあったが、F-ZEROを見た後だとそれ程でもないように見えた。そのくらい、F-ZEROのスピード感は衝撃的だった。

F-ZERO発売後、雑誌などではタイムアタックのテクニックなどが盛んに紹介され、コースのライン取り、ロケットスタート、CPUのマシンに体当りして加速するテクニックなどが次々編み出されていった。自分も、その特集記事を読みあさり、1分59秒の壁を切るために、さんざん最初のステージであるミュートシティを走りまくったものだ。

 

F-ZEROがSFCのゲームに与えた衝撃は本当に大きい。

「回転・拡大・縮小」という機能を与えられた凡百のゲームメーカーは、大抵の場合キャラを画面いっぱいに拡大してみたり、くるくる回してみたりといった、すぐに考えつくような使い方しかしなかった。だが、そういうメーカーに、任天堂はかくあるべしという解答をこのゲーム一本で叩きつけてみせた。

この、手前を拡大し奥を縮小して立体的に見せるという手法は、レースゲームだけでなく、様々なジャンルのゲームに応用されていった。その一つが、RPGのフィールド画面である。ファイナルファンタジーIVでは、オープニングで飛空艇が飛んでいる所を表現するために、同じ手法が使われた。

f:id:potatostudio:20150704142454j:plain

※ FFIVのオープニング。飛空艇の船団が優雅に飛んで行く様を表現している。

F-ZEROは紛うことなき名作ではあるが、その後の続編で大ヒットに恵まれたとは言いがたい。

1998年にはニンテンドウ64で「F-ZERO X」、ゲームボーイアドバンスで移植版とアニメとのメディアミックス作品「F-ZERO ファルコン伝説」「F-ZERO CLIMAX」、そしてニンテンドーゲームキューブで「F-ZERO GX」など、数は出ているのだが、初代F-ZEROを上回るような衝撃を与える作品にはなり得なかったと、個人的には思う。

そういう意味では、F-ZEROはSFCというハードの黎明期に生まれた「奇跡の一本」だったのかもしれない。