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自分用備忘録的な何か。

電子レンジは有害だ!っていう人、結構いるけど、あれ何でなの?

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わりと見かける電子レンジ有害論。

電子レンジ。

もはや現代の生活において欠かせないアイテムになった感のあるこの調理家電器具だが、どういうわけか「電子レンジを使って調理した食物は有害である」と考える人が、世の中には一定数いる。

実は、自分の知り合いにも頑なに電子レンジ有害説を信じてる人がいるのだ。実際、一切電子レンジ調理を使わせないので、奥さんが不憫で仕方ない。

電子レンジは、マグネトロンという装置を使って、電子レンジ内に2450MHzの周波数のマイクロ波を発生させる。なぜこの周波数なのかというと、これは水分子の固有振動数と同じで、共鳴効果が高いからだ。つまり、電子レンジは食品に含まれる水分をマイクロ波によって振動させることにより、熱を生み出して過熱する仕組みの装置だ。

電磁波が食品を過熱するという「得体のしれなさ」が、電子レンジをなにか恐ろしい物に思わせているのだろうか。

有害だと主張する人は、大体同じような主張をしている。曰く

  • 活性酸素が発生する。
  • アミノ酸が変性する。
  • 発がん性物質が生成される。
  • 容器から有害物質が食品に移行する。
  • マイクロ波が漏れる。
  • ソ連が電子レンジの使用を禁止した。

などなど。

本気でこの話について書こうと思えば、1万文字以上の超長文になってしまうので、今回はこれらの主張が果たして本当なのだろうかと言う事を、あっさりめに考察してみたいと思う。

 

調べていくと行き着く二人の科学者。

まず、一番もっともらしい栄養素の破壊についてだが、これについては凄く誤解されていて、例えばビタミンなんかは加熱には強く、一番弱いのは水で洗い流された時なのだ。

それでも、確かにレンジ調理をすれば栄養素の破壊自体は起こるが、それは「加熱」そのものによるものであり、電子レンジ固有の問題ではない。

それに、活性酸素だが、これも別に電子レンジでなくても、一般的な加熱調理ならばそれなりに発生しているのだ。なにも電子レンジだけが特別なわけではない。電子レンジだろうが、フライパンだろうが、活性酸素は発生するし、発がん性物質だって生成されるのである。

マイクロ波が漏れるという話は、普通に考えてあり得ないとしか言いようが無い。電子レンジには、マイクロ波が漏れないようにシールドが施されており、シールドが劇的に劣化でもしない限り漏れはしない。それに、マイクロ波はあっという間に減衰するので、多少漏れたところで人体に害を及ぼすのは不可能である。

そして、ソ連で電子レンジの使用が禁止されたという話に関しては、全くのデマであり、どこからこういう話が出てきたのか一切不明だったりする。「ソ連」という、超大国でありながら得体のしれない国家だったというイメージが、こういうデマを流布させるのに好都合だったということだろうか。

その他の主張を色々調べていくと、最終的に二人の科学者の名前に辿り着く。ハンス・ヘンケルと、リタ・リーという人物だ。

まず、ヘンケルの方は、こんな実験を行っている。

2ヶ月にわたって、電子レンジで照射をした食品とそうでないものを、別々のグループに食べさせて結果を見たところ、電子レンジグループにはガンの初期症状のような病理学的プロセスが見られたというのだ。

だが、この実験には大きな問題点があり、具体的な実験方法や検証する方法も全く書かれていなかったため、査読されることもなく、誰も追試出来なかった。実験のレベルとしては、かなり雑なものであったとしか言い様がない。しかも、この論文を出したのは科学雑誌ではなく一般誌であった。

もう一人のリタ・リーの方はどうだろう。

この人は、電子レンジで調理すると、おしなべてアミノ酸が変性し、発がん性物質も発生すると主張している。さらに、容器から毒物が食品へと移行するとも述べている。

この実験の問題点としてあげられるのは、実験が通常の生活では起こりえないシチュエーションで行われている点が挙げられる。

具体的に言うと、たとえばアミノ酸の変性は、密封したガラス瓶の中で放射期間の終了時には200℃を超える温度で加熱されたアミノ酸において得られたものなのだ。容器からの毒物の移行についても、同様の熱条件下における話なのだ。

しかし、「外国の科学者がした研究」というだけで、これらの実験は妙な「箔」が付き、色々なサイトやブログで取り上げられている。

 

バイアスに騙されてはいけない。

とにかく、この電子レンジ有害論に関しては、電子レンジ特有の問題を述べているわけではないし、その根拠の拠り所である二人の科学者の主張にも色々問題がある。なのに、色々なサイトやブログで取り上げられ続けているのは、「科学者」というバイアスに騙されてしまっているからだろう。

よく、健康食品などのCMで、必ず白衣を着た研究者や大学の教授らしい人が、その食品の効果を誇らしげに語っていたりするが、これはそういう「偉そうな肩書を持っている人が語っていることは本当である」という、大衆が感じるバイアスを利用しているにすぎない。

この電子レンジ有害論も、元をたどれば「外国の(有名なのかどうかすらわからない)科学者が、(査読も追試もされていない)論文の中で「電子レンジでの調理は有害である」と述べている事を根拠にしている。

だが、論文というものは、雑誌に載ればそれで終わりではない。どんなに有名な雑誌に載ろうが、査読され、多くの科学者に追試されて、それでも同一の結果が確認されてこそ、本物の論文といえるのだ

我々は、その事を既に学んだはずなのだ。

そう、STAP細胞騒動の時に。