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自分用備忘録的な何か。

ラグビー日本代表の帰国に際し思うこと。〜続・日本人は本当に「スポーツ」を楽しんでいるのか?〜

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ラグビーW杯におけるジャパンの躍進。

イングランドで開催されているラグビーW杯で、日本はプールBにおいて3勝をあげたにもかかわらず、ボーナスポイントの差などで敗退が決定した。それでも、第1回大会から連続して出場をしていながら、これまで1勝しか出来なかった事を考えれば、今大会は躍進したと言っていいだろう。

実際、初戦で南アフリカに勝利した時は、その価値が充分にわかっていない一般の人々でさえ熱狂し、日本にラグビーのプチブームを引き起こした。昨日帰国したブレイブブロッサムズの面々は、出国時の数倍の群衆の歓迎を受け、帰国会見はテレビで生中継された。

ラグビーは競技の性質上、サッカーなどと違って引いて守ったり、ボールをポゼッションして時間を稼ぐなどの戦い方が出来ないので、得点機会を多く作れるチームが勝つ可能性が高い。要は、実力が結果に極めて反映されやすいスポーツだ。そのため、南アフリカのような強豪国に日本が勝つということは、理論上起こりえない事なのだ。

だが、エディ・ジョーンズ率いるジャパンはその「あり得ない奇跡」を手繰り寄せた。これがどれだけ凄い事なのかは、ラグビーの母国イングランドのメディアが「ラグビー史上最大の番狂わせ」と表現した事からもわかる。

自分はサッカーファンであり、ラグビーについてはそこまで詳しくはないのだが、今大会前までは正直この大会とラグビーの行く末について心配をしていた。大会前の報道量があまりにも少なすぎた為だ。

なでしこジャパンが優勝した女子W杯ドイツ大会の時もそうだったが、今回も南アフリカに勝利するまで「ラグビーのW杯が開催される事」を知っていた日本人がどれだけいたのだろうか。

 

ある欧州ジャーナリストの言葉が忘れられない。

2002年の日韓共催W杯が開催されてからもう13年。今更言うまでもないが、あの大会で日本は初めてグループリーグを突破し、ベスト16ではトルコの前に奇策を講じて敗れた。

対して、韓国はイタリア、スペインなどの強豪国を次々と撃破し、準決勝でドイツに、3位決定戦ではトルコに敗れたものの、アジア勢史上初のベスト4という結果を残した。

韓国国内では、代表チームを応援しようとパブリックビューイングに大勢の人が集まり、凄まじい熱狂ぶりで自国の代表チームの応援をしていた。その模様は日本のテレビでも報道されていたので覚えている人もいるだろう。

www.youtube.com

日本もかなりの盛り上がりっぷりだった。なんといってもグループリーグ第2戦のロシア戦は66.1%という驚異的な視聴率を叩き出し、2002年の年間視聴率トップ10のうち、9つがW杯の試合(8位は紅白だった)を占めていたのだ。

だが、韓国は成績が成績だっただけに、日本より遥かに盛り上がった。本来はオリンピックのメダリストなど、「国際大会での入賞」に与えられる兵役免除が、4位だった韓国代表選手達に与えられたことからも、その盛り上がりのほどが伺える。

この大会については、色々と問題もあった(あえて触れない。長くなるから)が、自分が一番忘れられないのは大会後に欧州のジャーナリスト(誰だったかは忘れた)が、何かのサイトに寄稿していたコラムだ。ネットでいくら検索しても出てこないので、自分の記憶の中からニュアンスだけを引用するが、以下の様なものだった。

韓国の国民は、サッカーという競技を楽しんでいるのではなく、自国の選手が活躍する姿を見たいだけだ。彼らは、目の前で繰り広げられている競技がたとえサッカーではなかったとしても、その事に気が付かずに応援を続けるだろう。

日本人は、このジャーナリストの言葉を聞いたらどう思うだろうか。かつてソウル広場に集まった韓国国民を笑うことが出来るだろうか? 自分には出来ない。なぜなら、このジャーナリストの言ったことは、そっくりそのまま日本にも当てはまると自覚しているからだ。

 

メディアの意識改革も必要。

以下の記事は2008年のものだが、この記事に書かれている内容が今でも充分に通用することが、日本のスポーツを取り巻く環境がまるで成長していない事を端的に表していると思う。

news.livedoor.com

とにかく、日本のメディアはあまりにも「日本人の活躍」に焦点を当てすぎて、その競技の本質を伝えようとしない。

たとえば、欧州リーグの報道の場合、日本人が試合に出たかどうか、活躍したかどうか、あるいは得点に絡めず交代したかどうかだけが伝えられる。

仮にボルシア・ドルトムントが香川真司のゴールなしに勝利したとすると「香川選手のチームメイトがゴールを決めて、ドルトムントが勝利しました」などと報じられるのだ。これでは、香川の活躍に興味は持っても、サッカーという競技そのものに興味を持つ人は少ないだろう。

今回のラグビーW杯も、「エディ・ジョーンズという世界的名将」「五郎丸歩という特徴的な名前の選手」「五郎丸選手のキック前のポーズ」「マイケル・リーチ主将をはじめとする帰化選手・外国人選手」というキャッチーなポイントが沢山あり、それに関する報道はそれこそ山のようにあった。

では、ラグビーW杯の他のプールの情報はどうだっただろうか。

ニュージーランドやオーストラリアやウェールズなどの強豪国の結果や、開催国イングランドが初めてトーナメントに進めずに敗退した事を知っている日本人はどれほどいるだろうか。そして、ジャパン敗退後もラグビーW杯の結果を追う一般人はどれほど現れるだろうか。

2019年のラグビーW杯の開催国は日本である。

ラグビーW杯は、サッカーと違ってワールドラグビー(旧国際ラグビー評議会。サッカーで言うFIFA)からの分配金のようなものはなく、マーケティング及びマーチャンダイジングの権利も全てワールドラグビー側にある(これはどの国際大会でもだいたい一緒)上に、ローカルスポンサーの募集も許されていないので、開催にかかる費用であるおよそ400億円を観客動員のみで補わなければならない。

つまり、ジャパンの試合だけでなく、他の国同士の試合でもチケットが売れなければ大赤字は必至なのだ。これがどれだけ難しいかを簡単に規模で表現すると、秩父宮ラグビー場や花園ラグビー場を48試合全てで満員にしなければならないレベルである。

※実際には、すべての試合が満員になったとしてもチケット代が平均2万円程度でなければペイできない。

そういう意味で、日本ラグビーフットボール協会はメディアと協力して、今後「ラグビーという競技そのもの」に興味を持ってもらうように、全力を注がなければならないだろう。そうでなければ、ジャパン以外の試合は閑散としているなどという事になりかねない。

そのために残された時間は4年。たったの4年しか無い。