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自分用備忘録的な何か。

「ホメオパシー」とかいう疑似科学をどうにかしたい。

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疑似科学の代表選手「ホメオパシー」

先日、以下のエントリを読んだ。

homeo.club

本当にいつもいつも思うんだが、なんで今更「ホメオパシー」なんていう、なんの根拠もないものを信じられるんだろうかと、憤りを覚えずにはいられない。

ホメオパシーとは「同種療法」と言われるもので、要は「症状を引き起こすものによって、症状を取り去る」という、「同種の法則」と呼ばれるものに則って行われる。いわば、毒をもって毒を制すだ。

それと同時に二本柱として掲げられているのが、「超微量の原則」だ。これはどういうことかというと、物質を高度に薄めれば薄めるほど効果が高まるというものだ。

そして、その際に震とうを加える事でエネルギーを活性化する。これを「ダイナミック化」という。そうやって作った超希釈水を砂糖玉に染み込ませる。ホメオパシーで利用される治療薬「レメディー」はこういう過程を経て作られる。

ホメオパシーを考えだしたのは18世紀末のドイツ人医師サミュエル・ハーネマンだ。

当時の西洋医学は、今から考えるとトンデモな物が多かった。代表的なものが「瀉血(しゃけつ)」と呼ばれる治療法で、病人の手首などを切って血を抜くという、極めて非科学的で危険なものだった。

なぜ瀉血などという行為が治療の名のもとにまかり通っていたかというと、「病気は体内に溜まった毒素のせいで起きる」と考えられていたからだ。アメリカの初代大統領のジョージ・ワシントンも瀉血によって死亡したと言われている。

他にも傷口に焼きゴテを当ててみたり、炎症の箇所をヒルに吸わせてみたり、胃痛には吐剤を、腹痛には下剤を処方するなど酷いものが多く、これらは「英雄的治療」などと言われた。

また、当時は薬の成分に危険なものが多く使われており、アヘン、水銀、果ては硫酸などが「薬」として処方されていた。この頃の西洋医学は、かなりいい加減で患者に苦痛を強いるものだったといえるだろう。

こんな状況を疑問に思い、一度は諦めた医学の道に再び戻ってきてホメオパシーを考えだしたのが、前述のハーネマンだ。

 

ホメオパシーの問題点。

ハーネマンは、人間の体に宿る「何か」があると考え、その「何か」を「バイタルフォース」と名付けた。

バイタルフォースが乱れると、それは病気の症状になって体に現れる。ホメオパスは、その状態を読み取り、症状にあったレメディーを処方する。高度に希釈され、ダイナミック化されたレメディーを通じて体内に入った成分は、病気を消失させる。

これが、ホメオパシーの大まかな仕組みだ。

どうだろうか。これを聞いて、そのまま鵜呑みに出来る現代人がどれくらいいるだろうか。

ホメオパシーの問題点は幾つもある。

例えば、その成り立ちだ。

ハーネマンはマラリアの治療薬に使われるキネの皮を服用して、マラリアと同じ症状が出た事を根拠に「同種の法則」を考えだした。

ハーネマンは「1日に2回、15gの良質のキネを服用した」と言っているが、キネの皮から抽出されるキニーネは劇薬であり、致死量はわずか8g。1日15gのキニーネを飲んでただで済むはずがないし、そもそも当時はキネの皮からキニーネを分離する技術はまだ開発されていなかった。それを考えると、ハーネマンが摂取できたキニーネの量は、多く見積もってもせいぜい500mg程度だったはずだ。現在ではその程度の量では副作用が出ないと判明しているため、「キネの皮を服用してマラリアの症状が出る」わけがないのだ。

今では、このハーネマンの症状はキニーネ過敏症からくるアレルギー反応だったのではないかと言われている。

他にも問題点はある。それは、果たして元の100万倍などという途方も無く希釈された液体を染み込ませた砂糖玉「レメディー」に、本当に元の物質が残っているのかという問題だ。

普通に考えて、そこまで薄めてしまったのであれば、その液体の中には元の物質は残っていない。しかも、レメディーの希釈過程で何度も吸い取り紙で溶液を吸い取るのだ。単に薄めたよりも余計に元の物質が残る可能性は低い。というか、ゼロに近い。というか、ゼロである。

だが、ハーネマンはレメディーの作成について「こうして殆ど数で表示できないほどに微細な粒子を生み出す」と言っている。つまり、ハーネマンは高度な希釈を経ても物質は残っていると考えていたのだ。だから、冒頭のブログの「物質は残ってなくてもエネルギーが残っている」という主張は色々な意味で間違っている。ハーネマンの著書「オルガノン」を読み直せ。あ、読んだことないのかな?

 

ホメオパシーは何故続いているのか。

ジョン・ドルトンが原子説を唱えたのは1803年。アメデオ・アヴォガドロが分子説を提唱したのは1811年。スタニツラオ・カッツァーオによりアヴォガドロの説が再評価され、分子説が確固たるものになったのは1858年である。

だが、ハーネマンが活躍していたのはそれよりも前の時代だ。つまり、原子や分子の概念が一般的にはあまり知られていなかった時代なのだ。だから、ホメオパシーのような理論が成り立つ余地があった。どんなに希釈しても、その物質は残っているという説には説得力があったのだ。

だが、現代は違う。

原子の存在も分子の存在も立証され、義務教育でもその事は教えられる。なのに、何故このような代替医療が一部の人間にもてはやされるのだろうか。

ホメオパシーは時に命に関わる。山口県では新生児にK2シロップを与えずに、代わりにK2レメディーを与えたことにより死亡するという事件が起きている。恐ろしいことに冒頭のブログでは「それは本物のホメオパシーではない。本物は安全」と、特に問題視していない。

加えて、冒頭のブログでは下記のような記述もある。。

しかし本当に効果もなくプラシーボでしかないものが、200年も続いていたり、王室の治療で使われていたり、インドで病院扱いだったり・・・・するわけないですよね?

続くんです。なぜなら人間は弱い生き物だから。絶望に打ちひしがれ、既存のどんな手段も頼ることが出来ないと信じてしまった人は、簡単に騙されてしまうのである。

ちなみに、「王室」とは英国王室の事を言っているのだと思うが、英国でホメオパシーが優遇されているのは、他ならぬチャールズ皇太子がオカルト好きだからだ。チャールズ皇太子は、自らが所有する会社で全く効果の無いデトックスチンキを販売し、労働党の批判に晒されたこともある事を知っているのだろうか。

英国王立ホメオパシー病院は近年名称を改め、治療にホメオパシーを使わない旨を宣言している。ホメオパシーの頼みの綱、英国でもホメオパシーに対する締め付けは強くなる一方なのだ。

加えて、インドではホメオパスが医療行為をすることは違法である。インドで病院扱いされているのは、貧困層には通常医療のお金が高すぎるため、ホメオパスに違法な治療行為を受けているという背景がある。知ってたか?

ホメオパシーは、元々は英雄的治療を行っていた当時の医療に対する嫌悪感から始まっている。患者に苦しみを与えずに治療したいというハーネマンの意思は素晴らしいものであり、決して間違ってはいない。

だが、現在では効力が全くないと断言できるホメオパシーを、無責任にも喧伝しようとする行為は、果たしてハーネマンが望んでいる事なのだろうか? ハーネマンも、ホメオパシーが間違っていて、今ではもっと確実に治療する方法があることを知ったら、ホメオパシーを無理強いするだろうか?

冒頭のブログの結びにはこうある。

最後にdisってる人へ、

そのわけのわからん失敗、私がやったんとちゃうし!

ホメオパシーいじめないでね!!

いじめではない。

間違っている事を間違いだと正しているのだ。時には人の命を奪う事態になってしまう事に対して、警鐘を鳴らしているのだ。

自分がやったわけではないので、(私の)ホメオパシーは間違っていないというこの主張は、あまりにも無責任で、ハーネマンがかつて目指した理想を踏みにじる冒涜的行為だということに、何故気が付かないのだろうか。

せめてホメオパシーの有効性を主張したいのなら、完璧な二重盲検法をクリアしてから言って欲しい。まさか、二重盲検法を知らないなどとは言わないだろうな?