Yukibou's Hideout on Hatena

自分用備忘録的な何か。

ジュンク堂書店渋谷店の民主主義フェアについて思ったことを今更書く。

f:id:potatostudio:20151111111403j:plain

外食産業にいたあの頃。

自分が最初に就職したのは外食産業だった。

就職活動をしていた年に山一證券が経営破綻した。これが日本経済に及ぼした影響は大きかった。なにしろ、日本4大証券会社の破綻である。これが意味する所は、もはや政府は大手金融機関であっても助けの手を差し伸べないという、無慈悲な現実が明確にされたということだった。

あの年は、日本の金融恐慌と言ってもいいような年だった。

金融機関は翌年の早期是正措置を控えて総資産の圧縮を始め「貸し渋り」が横行した。そうした素地があった上で山一證券だけでなく、三洋証券、北海道拓殖銀行など、いままで信じられていた「潰れるはずのない金融機関」が相次いで倒産した。当然、それらが抱えていた債務は焦げ付き、回収不可能となった。日本経済はパニックに陥っていた。

これらの事件は、最終的には全て11月に起こっているが、そのずっと前から予見されており、あの年の就職活動にも大きな影響を与えていた。

1997年5月には、第一勧業銀行による総会屋利益供与事件も起きている。これで、世間的に株主総会がやたらと注目されていた。そして、自分が就職した会社は、この株主総会で株主との立食パーティーを実施するなど、開かれた株主総会で有名な会社だった。

自分も、興味本位でその会社の試験を受け、とくに何の問題もなく内定を貰い、いくつか貰った中から「東京で働ける」という一点のみを決め手にしてその会社を選んだ。

 

チェーン店を運営するということ。

その会社は、多数の業態の専門店を経営する企業だった。

入社すると、まずどの部門に配属されるがか決まり、日本全国を幾つかのブロックにわけ、基本的に赴任した社員はそのブロック内の店舗を数年ごとに異動する。

自分は和食部門の関東2ブロックに配属された。

最初の店舗は溝の口のマルイのレストラン街にあるお店だった。店長は福岡出身の優しい人で、自分に色々な技術、そしてマネジメントの手法を教えてくれた。正直、いまでもあの人には感謝している。

そのお店で1年ちょっと働くうちに、いつのまにか辞令が来て副店長になった。新入社員が入ってきて自分の部下になり、教える立場になった。

自分は、店長に教わった事をその部下にも教えた。

その会社では当然ながらマニュアルというものがあり、それは各種メニューのレシピやお客様対応、クレーム時にどうすればいいか事細かに書いてあった。

特に重要なのはレシピだった。

チェーン店なので、どこのお店に行っても同じ味を提供しなければならない。その会社は、どこかの工場で大量に作ったものをお店で提供する「セントラルキッチン方式」ではなく、食材をお店で調理して提供する「スクラッチ方式」を採用していたので、レシピはとても重要なものだ。いわば、ブランドの顔である。

だが、その部下は学生時代に調理師の免許をとった腕前の持ち主で、いつも妙な自信を携えていた。聞いたところによるとバイトに「俺はこんな所で終わる男じゃない」とかなんとか言っていたらしい。

案の定、彼にお店を任せた時にはレシピにアレンジを加えて「こっちの方が美味しい」とかやっていた。自分は叱責した。

「そういう事は独立して自分の店を持ってからやれ!」

この言葉が彼の心に届いたのかどうかは不明だ。自分は、その時既に赤坂店への異動が決まっており、わずか数日後には溝の口のお店を去ってしまったからだ。

 

やるなら店を持て。

少し前、ジュンク堂書店の渋谷店が「自由と民主主義のための必読書50」というブックフェアをやった時に、その選書に問題があるという報道がなされた。

www.itmedia.co.jp

だが、個人的にはこれは選書に問題があったというより、「ジュンク堂渋谷非公式」と名乗るTwitterアカウント(店員の誰かが投稿していたと思われる)が、「この先イベントやフェアを次々ぶちかまして行く予定なので。年明けからは、選挙キャンペーンをやります! 夏の参院選まではうちも闘うと決めましたので!」というような発言をしたのが問題だったと思っている。

外食と書店。産業自体に大きな違いがあるのはわかっているが、あえてチェーン店で働いていた人間として言わせてもらえば、これはチェーン店としての行為を逸脱したものだと言わざるを得ない。

外食店舗におけるブランドの顔が味なのだとすれば、書店の顔は売り場そのものだ。この書店がどういう本をお客様に買ってもらいたいのか、それを表明する場が売り場なのだ。

そういう意味で、特定の思想に与した売り場を作り、「非公式」と付いてはいるが実質ジュンク堂書店渋谷店の声として、前述のような情報を発信したのはどう考えてもやり過ぎである。

自分は、そういうフェアが悪いとか、特定の思想に加担するのがダメと言っているのではない。むしろ、多種多様な意見があるのが健全な姿だし、一つのイデオロギーに収束させるような考え方は全体主義国家以外の何物でもない。

いくら自分がその店舗で働き、仮に店長などの立場になったとしても、それで「お店が自分のものになった」と履き違えてはならない。あくまで会社に雇われ、チェーン店としての運営権を託されているだけなのだ。

自分がやりたい事をやりたい。世間に自分の声を自由に発信したい。

そう思うのなら、自分のお店を持ってからにしなければならない。チェーン店という傘の中に入ったまま大きな声を出そうとするのは、他の同系列店舗やそれに関わる人達にどんな影響が振りかかるのかを顧みる事のない身勝手な行為にほかならないからだ。

チェーン店で働く人は、自分が背負っているのがお店ではなく、会社の看板だということを忘れないようにしよう。

ね。