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Yukibou's Hideout on Hatena

自分用備忘録的な何か。

「オタク=犯罪者」は、こうして「作られる」

いたましく、卑劣な犯罪。

先日、東京江戸川区で17歳の女子高生が殺されるという事件が起きた。まずは、この事件で犠牲になった女子生徒に対して心からお悔やみ申し上げます。

容疑者は女子生徒と同じコンビニでアルバイトしていた過去を持つ、青木正裕という人物である。当初、動機は「生活が苦しくて自暴自棄になり、自分の人生を終わらせようと思って殺害した」と供述していた。

www.news24.jp

最初に自分がこの事件の報道を聞いた時には、「青木容疑者が女子生徒と共通の趣味のアニメの話で自宅に誘った」という趣旨の内容だったため、嫌な予感がしていた。果たしてその予感は的中した。

昨日になって、容疑者の具体的な供述と家宅捜索の内容が明らかになり、報道が具体的になってきた。そして、恣意的にもなってきたのだ。

内容は以下の通りである。

www.news24.jp

news.tv-asahi.co.jp

日テレとテレ朝で伝え方が違っている。これは、この記事を配信した記者、そしてその記事にOKを出したデスクの意思と見ていいだろう。

つまり、日テレは青木容疑者が「首絞めDVDの影響でこの犯罪を思いついた(元々興味があったらしい)」と伝えたい。テレ朝は「容疑者は大量のアニメDVDを所持しているオタク」であると言いたいのだろう。 

 

宮崎勤の与えた衝撃。

いつも思うのは、槍玉に挙げられるのは、「挙げる方から見て、無くなっても困らないと思うもの」だな、という事だ。

例えば、こんにゃくゼリーを喉につまらせて子供が亡くなると、こんにゃくゼリーの会社は是正措置を求められる。本来そのまま食べさせるものを、凍らせて溶かさずに食べさせるという間違った食べ方だったとしても、だ。(ちなみに訴訟は原告側の敗訴。最高裁まで行ったのかな? 見つからなかった)

www.nikkei.com

では、金属バットで殴り殺された人がいたらバットの販売が規制されるだろうか。子供がゴルフボールを飲み込んで喉につまらせたらゴルフボールの販売や所持に責任問題が浮上するだろうか。あるいは、酒に酔ったうえで殺人を犯したとして、酒が規制されるだろうか。

そんな事はない。どれも道具や酒のせいではなく、使ったり飲んだ人間の問題とされるからだ。

しかし、猟奇的な殺人を犯した犯人がゲームやアニメ・漫画を所持していると、それが大きくクローズアップされる。その事自体が問題であるかのように報道される。

日本の社会は、一度「宮崎勤事件」を経験している。あの事件は日本中に衝撃をもたらしたし、彼の供述が意味不明だったこともあり、彼の人格がいかにして形成されていったのか、どうしてあのような凄惨な事件を起こすことが出来たのか、それを解き明かすためにメディアが群がった。

そして出された一つの結論が、「宮崎勤は5000本以上のロリコン・ホラービデオを持つ異常者。そしてオタク」というモノだった。

※実際には宮崎勤の所持していたビデオは、殆どがアニメを含むテレビ番組を録画したものだった。

 

文化的醸成度の違い。

それでは、犯人が小説を持っていた場合はどうか。

実際問題、そういう事件が1979年に起きている。大学教授の父と脚本家の母の間に生まれた朝倉泉という少年が、祖母を殺害した後にビルから投身自殺をするというショッキングな事件だ。

朝倉少年祖母殺害事件

朝倉少年は膨大な量の遺書と、詳細な犯行計画書を残していた。そして、後に母親が発表した本によると、筒井康隆の「大いなる助走」という作品に強く影響を受けていた事がわかる。

「大いなる助走」とは、直木賞を模した「直廾賞」という架空の文学賞をめぐって起きる連続殺人事件を描いたものだ。主人公は、この直廾賞に落選し、その選考委員を次々と猟銃で殺していき、最後には逃走中に事故死して終わる。

この事件に対して、筒井康隆自身が事件と同年(!)に「現代思想」という本で、心理学者である岸田秀と対談をしているが、その時のコメントは以下の様なものであった。

「ぼくははっきり自分の影響だと思ってます。(中略)愛情に飢えたこどもに対して僕の文学は効きめがあったわけです。人殺ししちゃった(笑)」

これを例えば漫画やアニメ、ゲームの作家が言ったらどうなるだろうか?

「僕の作品が愛情に飢えた子供に対して効き目があり、人殺ししちゃった(笑)」

おそらく、世間から袋叩きにあうだろう。

(笑)などと付けて茶化した日には、もう社会的に抹殺されてしまうのではないだろうか。

文学は、多くの人が「無くなっては困るもの」だと思うだけの文化的な素地があり、この事件が起きた時点で筒井康隆は「時をかける少女」などのヒット作を生み出した超人気作家でもあった。だから、彼のこの信じがたい発言はそこまで問題視されなかった。しかも、この作品は後に映画化されているのだ。勿論、現代で同じことをすれば、おそらくネットの力で非難が集中し、タダではすまないだろうが。

文学などと比べると、漫画やアニメ、ゲームなどはまだサブカルチャーの域を出ず、社会的にも「一般人」の評価は低い。少なくともメディアはそう捉えている。でなければ、こういった事件が起きる度に毎回こういう報道をされたりはしないはずだ。

オタクはすべからく犯罪者ではない。当然である。だが、オタクが犯罪を犯すと、それを最大化して報道しようとするのがメディアの常だ。キャッチーだからである。こういう構図が、わかりやすいステレオタイプだからだ。

またこうして、「オタク=犯罪者」が「作られていく」

おそらく、この先もずっと。

※本エントリは、特定個人を擁護・攻撃するためのものではありません。