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自分用備忘録的な何か。

娘とエントロピーと宇宙。

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エン… トロ…

中学生の頃、友達が一冊の本を持ってきたことがあった。タイトルは「悪魔が生んだ科学」。

悪魔が生んだ科学―永久機関工学の栄光と悲惨 (カッパ・サイエンス)

悪魔が生んだ科学―永久機関工学の栄光と悲惨 (カッパ・サイエンス)

 

副題は「永久機関工学の栄光と悲惨」とある。自分は、この時「永久機関」という言葉を初めて知った。

トンデモ世界では、だいたいにおいて「永久機関」という言葉が出てきたら身構えなければならない。そもそも、永久機関は理論上不可能だからだ。

正直、この本は中学生の自分にはかなり難解だった。

書いてある事のレベルが高いとかそういう話ではなくて、一言で言うと支離滅裂なのだ。ちゃんとプロの校正が入ったとは思えないほど滅茶苦茶で、ひょっとしたら口述筆記したものをそのまま本にしたんじゃないか?と思ってしまうほど酷い本だった。

取り上げられているものも、副題の永久機関は勿論、カタカムナ、古代人がコンピュータを使っていた説、そしてロータリーエンジンは永久機関なのだ説、永久機関の完成を妨害するアカデミズム的な陰謀説… 今にして思えば由緒正しいトンデモ本なのだが、当時の自分にはそこまで噛み砕く知識が無かった。

だが、その本が全く役に立たなかったのかと言われれば、実はそうでもなかった。その本で、今まで全く聞いたことのなかった概念に触れたのだ。それが、「エントロピー」である。

 

 

カオスな毎日。

エントロピーは、主に熱力学の分野で使用されていた。その後、統計力学でも使用される事になる。

エントロピーとは、物凄くざっくり言ってしまうと「乱雑さ」を表す概念だ。

例えば、自分のデスクを例に取ろう。使い始めは、あらゆる道具が綺麗に配置され、書類もなにも置かれていない秩序立った空間だ。これを、「エントロピーが最小の状態」と定義する。

しばらく仕事を続けると、デスクの上は書類や筆記用具、おやつのかけらなどでどんどん乱雑になってくる。つまり、「エントロピーが増大」したのだ。

エントロピーは基本的に減少しない。たとえば、散らかったデスクの上を片付けるとしよう。綺麗に元通りにしてエントロピーが最小の状態に戻した。だが、そのために使われた体を動かすエネルギーや、捨てられた書類などのゴミを含めると、やはり結果的にエントロピーは増大しているのだ。(物凄く雑に言っています)

これが表す結論は一つ。永久機関は作ることが出来ないという事だ。エントロピーが増大し続ける限り、外部からエネルギーを受け取らずに動作し続ける装置は絶対に作れないのである。いわゆる、熱力学第2法則というやつだ。

この話を続けると、マクスウェルの悪魔とか面倒くさい話をしないといけなくなるのでこれ以上は進めないが、とにかくこの本は自分にとっては重大な転機となった。この本を読んだことが、いわゆる「トンデモ本」ウォッチングをするキッカケになったからだ。

この前置きを踏まえた上で最近思うのは、娘が成長するに従ってどんどんエントロピー増大の速度が上がっているということだ。

最近では出来ることも増えてきたので、おもちゃの数も随分と増えた。もう今まで使っていたおもちゃ箱では入りきらなくなってしまったので、一回り大きい箱に変えた。朝はそこにおもちゃがすべて収納してあって、エントロピーが最小の状態に保たれている。

だが、娘が起きてリビングに連れてこられると、エントロピーは急上昇する。もう、ハッキリ言ってカオスと言ってもいい状態に一瞬で変えられてしまうのだ。

 

まずひっくり返します。

手順としてはこうだ。

まずオモチャ箱を手に取り、ひっくり返す。中身をぶちまけるのだ。そして、その中から自分の気に入ったおもちゃを手に取り、コタツなどにぶつけて遊ぶ。そんな娘の顔は「キャッキャッ」と満面の笑みを浮かべて実に楽しそうだ。

だが、ウチの娘は一つのものに執着しない。一度手に入れてしまうと満足してしまうのか、すぐ飽きてポイッと捨ててしまう。何度手に取らせても、即ポイである。そして、次のターゲットに向かって突進していく。

不思議なもので、ウチの娘はなんでもひっくり返す。リモコンでも、やりたい放題でもなんでも裏返すのだ。世の中の裏が気になる女なんだろうか。

まだ自分で歩くことは出来ないものの、コタツにつかまり立ち上がってつたい歩きすることは可能なので、コタツの周りを嬉しそうにニコニコ顔でテコテコ歩く。その際に、コタツの上にあるものはすべてなぎ倒す。コタツの上のエントロピーは最小になるが、代わりに床のエントロピーが増大する。熱力学第2法則はやはり保持されているのだ。

その昔、熱力学モデルによる宇宙は、やがてエントロピーが最大となり、宇宙のすべてが均質化、平衡化した熱的死を迎えると考えられていた。そこには何も芽生えず、生まれず、永遠の静けさだけがある。

だが、我が家には当分熱的死は訪れそうもない。