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Yukibou's Hideout on Hatena

自分用備忘録的な何か。

世界はまだ、あまりに眩しくて、賑やかすぎる。

子供の頃から暗闇と静寂が苦手だった。

今でも、実のところ眠るときに完全な暗闇にして寝るのは苦手だ。だから、ベッドボードにLEDライトを取り付けて、薄明かりにした状態で寝ている。

一度、完全な暗闇がどんなものか試してみたくて、大学生時代にバイトしていたスーパーの冷凍室で、ドアを閉め、明かりを消してみたことがあった。その冷凍室にはなんのランプもついておらず、電気を消すと本当に完全な暗闇だった。空調の音だけがする真の闇。数秒で恐ろしくなってすぐ電気を点けた。

なんで闇が怖いのかはわからない。生物の本能的なものなのだろうか。世の中には平気な人もいるのかもしれないが、とにかく自分は苦手だ。

静寂も好きではない。

昔から静かになると妙な音が聞こえる。

「シャーン、シャーン、シャーン…」

子供の頃はこの音が怖かった。何の音かわからなかったが、とにかく静かになるとこの音が聞こえてくる。まるで修験者が持っている錫杖を鳴らしているみたいに。悪い子である自分を、恐ろしい何かが迎えに来るのではないかと不安に駆られた。

この音が聞こえてくると気になって眠れない。子供の頃は眠れないのが嫌で親に泣きついたこともあった。だが、音の話はしなかった。頭がおかしいと思われるのが嫌だったからだ。

霊的な何かが自分を連れ去っていくのではないかという強迫観念は、やがてそれを否定するための理論武装へと変わっていった。こうして自分は懐疑主義者になっていった。超自然的な現象・存在などあるわけがない、と。

闇など恐れる必要はない。静寂もだ。誰も自分を連れ去りはしないんだ。

この音が、どうやら自分の脈拍のタイミングと一致している事に気がついたのはつい最近のことだ。

最近でこそ減ったものの、昔から頭痛持ちで、常に財布の中に頭痛薬を忍ばせていた。頭痛に苛まれている時、こめかみを抑えるとドクドクと脈打っているのがわかる。ベッドで寝込んでいる時に、その脈と例の音が一致していることに気がついたのだ。ひょっとしたらこれは血管異常の可能性もある。頭痛の原因はこれかもしれない。

実は、先週社会復帰を果たしたばかりだが、早々に1週間休んでしまった。異様な頭痛に襲われて、とても外出できる状態ではなくなってしまったのだ。

とにかく目に光が入るのが辛い。耳に音が届くのが耐えられない。すべてが突き刺さるように自分に襲いかかり、起きているのさえ辛かった。

ここ数日間は、ずっと寝ていた。PCやiPhoneのディスプレイを見るのも辛かったので、妻や会社と連絡を取るとき以外は一切デジタル世界との繋がりを断った。

主治医に相談してみたが、緊張性頭痛や偏頭痛と言われるもので、マイナス思考のスパイラルに陥ってしまっていると言われた。元々性格的にペシミストであるので、そういうドツボにハマりやすいのだが、自分でも自覚しないうちに今回もそうなってしまっていたらしい。

「気楽に考えろ」

「余計なことを考えすぎ」

「そもそも自意識過剰なんじゃないのか?」

今までも散々そういう事を言われた。だが、持って生まれた性格はそうそう変わるものではない。そういう所だけ妙に頑固なのかもしれない。この数ヶ月、自宅療養で随分と改善されたと思っていたのだが、根本的な部分はそんなに変わっていなかったようだ。

復帰するタイミングで右手を負傷したというのも良くなかった。このせいで、余計に何も出来なくなってしまった。周囲の人が苛ついているのが、何でもかんでも自分のせいなんじゃないかと考えるようになり、結果として本当に何も出来なくなってしまった。

全体的に見れば、自分のメンタルはいま回復期にある。その途上でたまたま下向きの波が来ているだけなのだろう。頭ではわかっているつもりだが、心がついていかない。周囲に諭されれば諭されるほど、自分が駄目な人間に思えてきてしまう。

せめて腕が使えるようになれば少しは違うのだろうが、まだ完全ではない。こればっかりは解決する術は時が経つのを待つしか無い。

眩しすぎる世界から目を背け、飛び込んでくる喧騒から逃げるために耳をふさぐ。そうするとあの音がまた聞こえてくる。

「シャーン、シャーン、シャーン…」

子供の頃、あれだけ怖かったあの音が心地いい。

あんなに嫌いだった暗闇と静寂が、今は自分を癒やしてくれる。

何が恐ろしくて、何が恐ろしくないのか、今ではもうわからなくなってしまった。

とりあえずまた目を閉じよう。そして耳をふさごう。

世界はまだ、あまりに眩しくて、賑やかすぎる。