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自分用備忘録的な何か。

ロシアW杯アジア2次予選 日本vsシリア あっさりマッチレビュー

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まるで、ザックジャパンを見ているかのようだった。

見慣れた4−2−3−1、細かくパスを繋ぎ、相手を走らせる。ゴールこそ割れないものの、圧倒的に試合を支配し、前半は殆どハーフコートゲームだった。アルベルト・ザッケローニが監督だった頃によく見た光景だった。

このロシアW杯アジア2次予選は、2019年にUAEで開催されるアジアカップの予選も兼ねている。なので、今までであれば戦う必要のない相手であった、アフガニスタンやシンガポールという、二段ほど力の劣るレベルのチームとも試合をしなければならなかった。

そういったチームは、日本を相手にすると徹底的に守ってくる。センターサークルの向こう側に誰も相手選手がいないなどということはザラで、バイタルエリアを10人で固めるということも平気でやってきた。顕著だったのが初戦のシンガポール戦で、GKの大当たりもあり、スコアレスドローに終わった。

次の日のメディアは、「本当にこれで大丈夫なのか?」という論調が支配していた。ハリルホジッチが監督に就任して、日本は弱くなったのではないか。さっさと解任して別の監督に任せるべきではないか。「辛口御意見番」を自認するセルジオ越後や、最近何故かその後釜を狙っていると思しき武田修宏などが中心となって、監督、代表批判が続いた。

だが、8試合27得点無失点。見事な成績ではないか。

基本的にハリルホジッチはロングボールで裏を狙いたがる。だが、このレベルのチームを相手にすると、DFラインの裏にはスペースなど無い。

確かに、針の穴を通す様なフィードが通ればゴールを陥れることが出来るかもしれない。しかし、そんなプレイは稀だ。可能性を考えれば、相手を引き出してからの崩しのほうが得点を奪えるに決まっている。

だから、選手たちはこのシリア戦はかつてのザックジャパンのようにプレーしたのだろう。

ハリルホジッチ自体は、試合中に「ロングボールを使うように」としきりに指示を出していた。だが、森重真人や吉田麻也が時折DFラインからロングフィードを送ることはあっても、崩しの基本をロングボールに頼るようなことはしなかった。

試合の流れを見てみよう。

前半3分にハイプレスからCKを奪い、早速チャンスを作ると、8分には酒井高徳のオーバーラップから香川真司、長谷部誠と繋いでゴール前の岡崎慎司へ。シュートは外れたものの、見事な攻撃だった。

前半13分付近には、森重から岡崎へのロングボールが目立ったものの、17分にCKから相手のオウンゴールで先制。その5分後には酒井→香川と繋いで岡崎がバイシクル気味のシュートを放つも枠を外した。26分には岡崎と本田圭佑で崩したところへ酒井がフリーで飛び込む。だが、これも枠を外す。

この試合、審判の判定はかなりいい加減だった。どう考えてもPKだったりオフサイドだったりしたプレーを見逃し、香川の謎のハンドをとったり、長友佑都にイエローを出したり、ちょっと判定の精度に問題があった。

それでも、前半は殆どピンチらしいピンチを迎えずに終わり、後半へと突入した。スコアこそ最小だったが、もう日本が負ける要素は審判以外にはありえないと思わせる内容だった。

後半も細かいパスを繋いで相手を揺さぶる。

後半5分には本田から岡崎、香川へと繋がり、宇佐美貴史に繋がる直前でシリアDFがコーナーに逃れた。そのCKは酒井が合わせるもゴールならず。この試合、酒井のシュートがやたらと目立った。その4分後、岡崎のクロスに本田がフリーでシュートするも、上に浮いてしまう。

後半10分に相手と競った山口蛍が負傷退場すると、原口元気が入った。1ボランチ2トップにするのかとおもいきや、原口はそのままボランチでプレーした。

後半16分、セットプレー崩れで残っていた森重から本田へとクロスが入り、本田がヘッドで狙うものの、ポストに当たってしまう。チャンスがほんの少しの所で外れる場面が続き、嫌な空気が流れ始める。

後半20分にシリアのカウンターを受けるも西川周作がビッグセーブを見せ、そのカウンターから香川の反転ボレーでゴールが生まれる。香川はドルトムントでも微妙な立ち位置にいるので、ここでゴールが生まれたのは大きかった。

そして、できれば引き分けたかったシリアがここに来て攻めに転じ、試合はオープンな展開の様相を呈してくる。攻められ慣れていない日本は、このカウンターに手を焼くことになる。

後半32分、岡崎が金崎夢生と交代し、34分、38分と立て続けにシリアのカウンターを受けるが、いずれも西川がビッグセーブを見せてゴールを許さない。

後半40分には宇佐美に代えて清武弘嗣を投入。ここから日本のゴールラッシュが始まる。

後半41分にシリアの攻撃を西川がまたもビッグセーブ、そのカウンターで清武から香川へとボールが渡る。香川はプレゼントのようなボールを本田に送り、本田はファーサイドのネットをヘッドで揺らした。

後半44分にはまたもやシリアに決定的なチャンスを許すものの、ここも西川がグレイトセーブを見せ、その後の日本の攻撃で香川が、GKに一旦は弾かれながらもこぼれ球を押し込み、自身は2点目、日本にとっての4点目を決める。

後半48分、もう試合終了間際にもかかわらず、とんでもないスプリントを見せた長友が原口に最高のクロスを送る。これをプッシュした所で試合終了。日本は5−0でグループ最大の難敵を下した。

試合終了直後、ハリルホジッチは長谷部となにやら話していた。ひょっとしたら今日の試合の指示について確認していたのかもしれない。ロングボールはどうした?と。

これはあくまで個人の想像の域を出ない話だが、今日は2次予選の最終戦であり、岡崎の代表100キャップの記念の試合でもあった。選手たちは、ロングボールで攻めあぐねる指示ではなく、自分たちの判断でポゼッション重視のサッカーをやったのではないか。

たしかに、ハリルホジッチのサッカーは強豪を相手にすると滅法強い。裏にスペースのある状況で岡崎のような裏抜けの上手い選手にロングボールを入れまくられては、相手にとってもたまらないだろう。

だが、現時点のアジアにおいて、日本を相手にしてDFラインの後ろに大きなスペースを与えてくれるチームは殆ど無い。それをよく知っているからこそ、選手たちはまるでザックジャパンのようなサッカーをしたのではないだろうか。

ハリルホジッチはインタビューで「スペクタクルで美しい試合だった」と言ってはいたが、果たしてその心中はいかばかりだろうか。内心、指示を守らなかった選手たちを少し苦々しく思っていた可能性もある。あくまで想像だが。

かつて、2002年のW杯でも似たような事があった。あの時はフィリップ・トルシエがDFラインをとにかく上げろと指示したが、宮本恒靖を中心としたDFの選手たちが自主的にラインを低めに設定し、日本にW杯で初の勝点3をもたらした。そう、あのロシア戦である。

結果的にインタビューでは自分の功績のように語っていたトルシエだが、コーチの山本昌邦の著書「山本昌邦備忘録」によると、まったく納得はしていなかったそうだ。

だが、こういう事が日本のサッカーを強くしていくのだ。監督の指示だけを聞いてプレーするのではなく、それを踏まえた上で最善の手段を取ることが、強いチームの条件なのだ。

これは、叛乱ではない。

自立である。

山本昌邦備忘録 (講談社文庫)

山本昌邦備忘録 (講談社文庫)